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2  1 がん遺伝子パネル検査2000年代初頭から中頃にかけ開発された大規模並列塩基配列決定法に用いる解析機器は,次世代シークエンサー(NGS:next generation sequencer)と呼ばれるようになり,ゲノム科学分野を中心に近年急速に普及した。最近では,2015年米国で発表されたプレシジョンメディシン構想を契機に,NGSを医療応用したクリニカル・シークエンス,特にがんのゲノム変化を対象とした検査実施に向けた医療提供体制の整備が本邦で加速度的に進んだ。がん遺伝子パネル検査は,個々の患者におけるがんのゲノム変化(複数の遺伝子変化)をNGS技術等により明らかにし,その特性に応じた最適ながん治療の機会を供与することを目的とした検査である。本邦では2019年6月から保険診療要 旨本邦では,次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル検査が,固形がんを対象に2019年6月より保険診療下で本格稼働した。遺伝子パネル検査は,その診療上の位置づけから,コンパニオン診断とゲノムプロファイリング検査に大別される。前者は,すでにエビデンスが確立した標準治療へのアクセスを目的としている一方,後者は研究開発段階にあるエビデンスがまだ十分確立されていない治療へのアクセスを目的としている。固形がんを対象としたゲノムプロファイリング検査は,高度な結果解釈,二次的所見への対応,エキスパートパネルの実施など,これまでにない多工程から構成される検査であり,その実施は,ゲノム医療提供体制が整備された医療機関(がんゲノム医療指定病院)に限定されている。現在の保険診療では,本検査には主として腫瘍組織検体が用いられているが,今後,血中循環腫瘍由来遊離核酸検体を用いた検査(リキッドバイオプシー検査)が臨床導入される見込みとなっている。キーワードがん遺伝子パネル検査,コンパニオン診断,ゲノムプロファイリング検査はじめに畑中  豊 Yutaka Hatanaka木下 一郎 Ichiro Kinoshitaがん遺伝子パネル検査総説1

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