p53分子異常のある癌では,異常型p53蛋白に対するIgG抗体が誘導される。この抗原抗体反応を利用した検査が血清p53抗体検査であり,食道癌・大腸癌・乳癌の3癌種について体外診断薬として承認されている 1)。p53遺伝子異常に依存するためCEAと同様にあらゆる固形癌において一定の陽性率を示す(図1) 2, 3)。現在本邦で使用されている検査系では,基準範囲1.30 U/mL以下であり,1.31 U/mL以上を陽性と判定する 1)。陽性率が20%以上を示した癌種は,頭頸部癌,食道癌,大腸癌,子宮癌であり,10-20%の陽性率の腫瘍は,子宮頸癌,乳癌,前立腺癌,胆管癌,肺癌,膀胱癌,胃癌,膵癌であった 2)。本邦で保険適用となっているのは食道癌,大腸癌,乳癌であるが,CEAと同様に多くの癌種で陽性となる 3)。他の固形癌として,胃癌 4),肺癌 5),頭頸部癌 6, 7)などでも比較的早期の段階から陽性となること,あるいは予後との関連性があること,などが報告されている。年齢・性別・炎症・喫煙習慣などでほとんど影響を受けず,日内変動もない 2)。陽性率,特異度,再発診断,フォローアップ方法,悪性度診断,などにおける有用性について最近のPUBMED収載文献を中心に概説する。2020年7月20日時点のPUBMED文献検索ではキーワード[serum p53 antibody][cancer]で合計537編抽出された。食道癌42編,胃癌37編,大腸癌84編,肺癌76編,乳癌74編,卵巣癌47編,子宮癌19編,前立腺癌18編,肝癌53編,膵癌11編,胆管癌4編(重要 旨p53抗体検査は食道癌,大腸癌,乳癌の3癌腫において保険適用となっている。癌細胞におけるp53遺伝子異常によって生じる変異p53蛋白に対して血清中に誘導されるIgG自己抗体であり比較的早期の癌でも検出可能であることが特長である。年齢,性別,炎症,喫煙歴の影響は少ない。診断補助および治療後のモニタリングなどにおいて有用である。キーワードp53抗体,p53遺伝子異常,p53蛋白変異,IgG抗体28 5 p53抗体はじめに大嶋 陽幸 Yoko Oshima名波 竜規 Tatsuki Nanami島田 英昭 Hideaki Shimadap53抗体総説5
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