Ⅰ早期がんにおけるp53p53抗体検査は抗原抗体反応を利用しているため比較的早期の癌であっても血清抗体は陽性となるため,従来の分泌型腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9などと比較して診断上の有用性が高い 8-16)。また,従来の腫瘍マーカーとまったく異なる動態を示すため両者を併用することで陽性率が高くなる。総説5)%(evitisopbA 35p-itnAp53抗体肝癌神経膠腫卵巣癌膵癌胃癌膀胱癌肺癌胆道癌前立腺癌乳癌子宮頚癌子宮体癌大腸癌食道癌頭頚部癌 0図1 血清p53抗体ならびにCEAの臓器別陽性率の比較複あり)であった。Stage I食道癌における陽性率は23%であり,SCC抗原やCEAなどの既存の腫瘍マーカーより陽性率が高い 8, 9)。大腸癌においてもstage Iでの陽性率が16.5-23.7% 10-13)と報告されており,CEAなどの既存腫瘍マーカーと比較して早期癌での陽性率が高い傾向を認める。また,stage I乳癌における陽性率は,12-19%であり,既存の腫瘍マーカーよりも高い陽性率であった 14, 15)。保険適用ではないが,胃癌 4),肺癌 5, 6),頭頸部癌 7),子宮頸癌 16),卵巣癌 17),前立腺癌 18)においても比較的早期から陽性となること,あるいは予後との関連性があること,などが報告されている。癌検診における有用性について,宮下らは,1,650例の検診受診者においてp53抗体陽性者は61例(3.7%)であり,このうち5例で癌が発見されたと報告している 19)。また,検診受診者において,p53抗体陽性であった場合には,陰性であった場合と比較して,その後11年間に大腸癌を併発する率が1.77倍であったと報告されている。特に大腸癌診断前3年間では,抗体陽性者に大腸癌が発見される確率が2.26倍であった 20)。大腸炎症例においては癌合併症例でp53抗体陽性率が有意に高いが,免疫抑制剤を使用している症例では陽性率が有意に低下するとの報告があり 21),検診だけでなく癌補助診断においても免疫抑制剤の使用の有無に注意が必要である。総説 29■ p53 Ab■ CEA605040302010
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