1食道扁平上皮癌の診断に腫瘍マーカー検査を推奨するか?各論5食道癌MありなしなしNありありなしありTありありなしあり血液腫瘍マーカーは簡便な検査であり,癌の存在診断,再発リスクの予測,治療効果予測,術後再発のモニタリングなどに広く利用されている1)。しかし,食道癌における腫瘍マーカーの有用性を検証した研究は少ないため具体的な根拠が乏しい。2017年の食道癌診療ガイドラインでは「治療により一旦完治が得られた患者において,腫瘍マーカー(CEA,SCC抗原など)の定期的な測定を行うことを推奨するか?」とのCQに対して「定期的な測定を行うことを弱く推奨する(合意率90%[18/20],エビデンスの強さD)」と記載されている2)。食道扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてSCC抗原,CEA,p53抗体の3種類が保険適用となっているが,CY-FRA21-1は保険適用ではない(表1)。表1 食道扁平上皮癌における腫瘍マーカーの臨床病理学的意義各種腫瘍マーカー陽性率を図1に示す3)。全体として陽性率が高いのはSCC抗原であるが,StageⅠにおいてはp53抗体の陽性率が最も高い。両者とも各Stageでの陽性率は,Stageと正の相関関係を示しStageⅢあるいはStageⅣでは30%以上の陽性率である。偽陽性率は両者とも5%未満である。食道癌では過半数の症例で何らかのp53遺伝子機能異常が認められており変異型p53タンパクにより癌患者血清中にp53抗体が出現する。p53遺伝子異常は発癌の初期段階から認められることより,早期癌の診断としても有用である4, 5)。食道扁平上皮癌の診断において腫瘍マーカーとして第1選択はSCC抗原を推奨し,第2選択としてp53抗体を推奨する。無症状の対象者における食道癌スクリーニング検査としての腫瘍マーカーの有用性に関する根拠はない。腫瘍マーカーSCC抗原p53抗体CYFRA21-1解 説相関関係の有無CQAnswer食道扁平上皮癌においてSCC抗原,p53抗体は陽性率が高いため診断補助として検査することを強く推奨する。(推奨グレードC1)各論 69傾向あり予後ありなしなしあり治療感受性傾向ありありなしCEA傾向ありはじめに
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