376病理診断●●浸潤性乳癌におけるPD—L1検査は,使用予定の薬剤にあった試薬と判定方法を用いて行うべきである。 抗PD—L1ウサギモノクローナル抗体であるSP142を一次抗体とするベンタナOptiView PD—L1(SP142)®は,アテゾリズマブの投与を検討する際に必須のPD—L1検査であり,コンパニオン診断薬である。SP142はPD—L1の細胞質内ドメインに結合する1)。 アテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害薬の一種で,抗PD—L1ヒト化モノクローナル抗体である。アテゾリズマブの乳癌における第Ⅲ相臨床試験(IMpassion130試験)の結果については薬物療法のCQを参照されたい(乳癌診療ガイドライン①治療編,薬物CQ31参照)。 SP—142を用いたPD—L1検査を行う際には,指定された検出試薬と染色装置を用いる必要がある。また,この検査は,転移・再発の非小細胞肺癌患者に一次治療としてアテゾリズマブ単独療法を考慮する場合も必須である。しかし,その場合の判定方法は,乳癌におけるそれとは異なるので注意が必要である。 乳癌組織内でPD—L1陽性となり得る細胞は,乳癌細胞とリンパ球,マクロファージ,樹状細胞,顆粒球等の免疫細胞である。しかし,乳癌に対するSP142を用いたPD—L1のIHC法では,腫瘍浸潤免疫細胞(IC;リンパ球,マクロファージ,樹状細胞,顆粒球)のみを評価する。アテゾリズマブの投与対象(SP142によるPD—L1陽性基準)は,腫瘍領域に対して染色強度に関係なくPD—L1による陽性反応が認められるICの割合が1%以上の症例である。 IMpassion130試験におけるPD—L1検査はSP142と上記の判定方法を用いて行われ,対象となったトリプルネガティブ乳癌902例のPD—L1陽性率は40.8%であった2)。さらに,PD—L1陽性ステートメントFRQ 5浸潤性乳癌におけるPD—L1検査はどのように行うか?背 景 2021年10月現在,programmed cell death 1 ligand 1(PD—L1)陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)の手術不能または再発乳癌に対して,2種類の免疫チェックポイント阻害薬が保険承認されている。いずれの薬剤も投与前の免疫組織化学法(IHC法)によるPD—L1検査が必須であるが,その際に用いられる体外診断用医薬品と判定方法が異なっている。2つのPD—L1検査の概要と差異を検索した。なお,2020年医科診療報酬点数表におけるPD—L1蛋白免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製に関わる保険点数は2,700点で,当該抗悪性腫瘍薬の投与方針決定までの間に1回を限度として算定される。解 説 1 ) PD—L1検査試薬(1)SP142(表1)
元のページ ../index.html#11