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ガイドライン作成にあたってラインは,「Minds(Medical Information Distribution Service)診療ガイドライン作成の手引き2014」,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」を参考に作成をしている。Minds診療ガイドライン作成マニュアルは,公益財団法人日本医療機能評価機構内に設置されているEBM医療情報部(Minds事務局)によって発行,公開されており,2014年にver. 1.0が公開され,現在の最新版は「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」である。 最初に「益と害」の具体的な指標としてのアウトカム(例えば,「益」として「全生存期間」,「害」として「毒性」など)を,あらかじめCQごとに数個設定し,アウトカムごとに1~9点までの重要度の点数を付けることで,アウトカムの「重み付け」をする。次にCQに関連したキーワードから文献検索,抽出の後に,アウトカムごとに定量的あるいは定性的システマティック・レビューを行い,益と害のバランスを考慮して,CQに対する推奨の強さを各小委員会で決定した。定量的レビューとしては,各エビデンスのアウトカム評価を,それぞれの文献中データを元に独自にメタアナリシスを行い記録として残し,これを元に検討を行った。さらに各小委員会から提案された推奨文および推奨の強さを,推奨決定会議(複数の医師,看護師,薬剤師,乳癌経験者など,十数名の委員が参加)での議論・投票で最終決定している。推奨を決定する投票においては,薬剤が関連するCQではその販売製薬企業との利益相反が一定基準を超えている場合,またその薬剤の開発臨床試験で主導的な立場にある場合などは,その委員は投票権を辞退している。これら一連の作業は,2015年版までのガイドライン作成過程と比べて,より客観的で作成者の判断の偏りが入る余地の少ないガイドラインの作成手順であるといえる。そしてこの最終決定に基づき,担当委員が解説文の執筆を行い,相互レビューのうえで最終版を完成させている。今回発行する2022年版乳癌診療ガイドラインは,この2018年版での作成法をもとに,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」にできるだけ準拠しながら進めた。また,2018年版乳癌診療ガイドラインについての会員アンケート調査を2021年2月19日~3月4日に実施し,600名を超える会員からの回答結果をもとに,より使用しやすいガイドラインとするために,独自の工夫も行った。 今回の改訂を行うにあたり,新たな委員長および委員会メンバーが任命され,2020年10月にキックオフ会議を開催した。旧版のWEB版改訂を行った後,2021年2月に全体委員会を行い,2022年版の作成が開始された。総説:治療の基本的概念・流れ,言葉の定義,歴史的な経過,最低限必要な教科書的な知識などを記載。2022年版からは,治療・診断の流れと各治療の役割を全体として把握しやすくすることを目的に,①治療編では「治療編(薬物療法・外科療法・放射線療法)総説」として各CQへのリンク先がわかるフローチャートなどを掲載した。BQ(バックグラウンドクエスチョン):基本的には標準治療として位置付けられ,必ず実施すべき診療とされているもの。または,広く実施されているものの,根拠を強くするような新たなデータは出てこないと考えられるもの。CQ(クリニカルクエスチョン):日常臨床で判断に迷うテーマを取り上げ,定量的あるいは定性1)ガイドラインの構成33.2022年版乳癌診療ガイドラインの内容と作成過程

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