推 奨6.癌遺伝子診断と乳癌発症予防推奨におけるポイント●■BRCA病的バリアントを有する乳癌未発症者におけるBRRMが両側乳房の乳癌発症リスクを減少させることはほぼ確実である。●■一方,生存率の改善に関しては,RRSOの影響を受けたエビデンスが多く,今後さらなる検討が必要であり,不確実性が残る。推奨におけるポイント●■BRCA病的バリアントを有する乳癌既発症者におけるCRRMが対側乳房の乳癌発症リスクを減少させることはほぼ確実である。●■一方,生存率の改善に関しては,メタアナリシスでは有意な減少を示したが,交絡因子としてRRSOの影響が完全に排除できないため,不確実性が残る。●■推奨決定会議において,CRRMは患者さんの価値観の多様性への配慮や生存率の改善効果に関して不確実性が残ること等を総合的に勘案し,推奨の強さを2とした。124●●BRCA病的バリアントをもつ乳癌未発症者に対して,両側リスク低減乳房切除術(BRRM)を弱く推奨する。●推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:中,合意率:100%(38/38)●●BRCA病的バリアントをもつ乳癌既発症者に対して,対側リスク低減乳房切除術(CRRM)を弱く推奨する。●推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:中,合意率:86%(32/37)CQ 3BRCA病的バリアントをもつ女性にリスク低減乳房切除術(RRM)は勧められるか?背景・目的 BRCA1あるいはBRCA2病的バリアントを有する女性における70歳までの乳癌発症リスクは,最近のメタアナリシスの報告によると,それぞれ64.6%(95%CI 59.5-69.4),61.0%(95%CI 48.1-72.5)と高率である(二次資料①)。よって,BRCA1あるいはBRCA2病的バリアントが明らかとなった女性に対して,有効な予防対策を講じることは重要な課題である(二次資料②)。BRCA病的バリアント保持者におけるリスク低減乳房切除術(RRM)の益のアウトカムとして,乳癌発症リスク低減効果(重要度9点),全生存率改善効果(重要度8点),手術の満足度(重要度5点),癌への不安軽減効果(重要度7点)を,害のアウトカムとして費用対効果(重要度7点)の5つを設定した。 また,RRMについて,乳癌未発症者における両側リスク低減乳房切除術(BRRM)および一側乳房切除後の乳癌既発症者に対側の乳房を切除する対側リスク低減乳房切除術(CRRM)の2つに分けて検討する。解 説 BRCA1あるいはBRCA2病的バリアントを有する女性では,病的バリアントをもたない女性
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