理想のエンドポイント無再発生存期間無増悪生存期間真のエンドポイント(生存)に近い全体の有害事象発生頻度重篤な有害事象の割合奏効(寛解/切除)率治療完遂率治療中止に占める毒性中止・患者希望の割合全生存期間支持療法の性能支持療法による影響が大きい図2 支持療法におけるサロゲートエンドポイントの設定セボ群とオランザピン5 mg群に振り分けられ,結果オランザピン5 mgでも遅発性嘔吐を含めた悪心・嘔吐を抑える効果が示された。さらに支持療法自体の副作用である眠気も軽減することがわかった。 その他の予防的介入例としては発熱性好中球減少ハイリスクレジメンにおけるヒト顆粒球コロニー形成刺激因子(granulocyte‒colony stimulating factor;G‒CSF)の予防投与,サルコペニア予防のための術前リハビリテーションなどがある。b)対症的介入:symptom management 対症的介入とは出現した有害事象,合併症に対して行う介入を指す。 対症的介入において支持療法領域では重症化させず現行の治療を続行すること,緩和治療領域では昨日より今日のほうが楽であることが目標であり,100点満点ではなく60点を及第とする感覚が必要である。 対症的介入での一番の目標は「有害事象,合併症の重症度を軽減する」ことである。実際には有害事象,合併症が重篤化するのを防いだり,有害事象,合併症の発現期間が短縮したりすることで効果を得られる。対症的介入の結果により,従来の方法より有害事象,合併症の重症度が軽減されれば,対症的介入の価値があるといえる。(1) 対症的介入の代表例 抗がん薬長期使用による倦怠感 倦怠感や食欲不振などはどの抗がん薬であっても,長期使用を行うと複合的な要因によって起こる。がんに伴う疲労(倦怠感)はCRF2)と呼ばれ,131Dose intensityその定義は「日常生活を阻害するような,がんもしくはがんの治療に伴う持続する主観的な疲労」とされており,がんそのものによって起こる疲労だけでなく抗がん薬治療に伴って起こる疲労も含まれる。CRFの原因として貧血,うつ症状,睡眠障害,悪液質,ホルモン異常などが多いといわれている。まず担当医は「患者がなぜ倦怠感を訴えているのか」という原因検索から開始し,それに応じて適切な介入を行う必要がある。 その他の対照的介入例としては疼痛に対する鎮痛薬,術後体力低下に対するリハビリなどがある。4) 支持療法・緩和治療領域における臨床 支持療法と緩和治療では目的が違うため,設定するエンドポイントの性質も大きく変わってくる。支持療法の究極は生存を延長することであるが,生存を延長する要因は本体治療によるところが大きく,全生存期間(overall survival;OS)や無増悪生存期間(progression free survival;PFS)では支持療法そのものの性能を推し量ることは難しいため,より支持療法の影響を受けるであろう生存指標のサロゲートマーカー(代替指標)を設定しなくてはならない(図2)。一方,緩和治療の場合は患者の置かれた現状を少しでも改善することが目的であるため生存指標に依存することのないエンドポイントの設定が求められる。(詳細は「支持療法・緩和治療研究ポリシー」を参照) 前述の通り言葉の定義についても整理する必要があるが,整理したうえで研究という観点から支持療法と緩和治療は目的が明確に違うということを認識しなくてはいけない。5)おわりに 多職種が関わる支持療法・緩和治療の研究ではお互いの教育プロセスも職業的文化も異なるため,公用語ともいえる学術的な用語の定義は明確にしておく必要がある。これらの定義はまだ新しいため,現在,読者が所属しているチームでこれらの定義が浸透しているという保証はない。そこで議論を始める前に,まず使用する言語の意味について共通認識をもっているかどうか確認をする試験
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