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4)ICIによる下垂体機能低下症の治療a)急性期の治療 ICIによる下垂体機能障害として最も頻度が高いACTH分泌低下症は対処が遅れると副腎クリーゼを発症し生命に危険を及ぼすため,直ちに治療を開始する必要がある(「副腎」の項参照)。しかし,甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hor-mone;TSH)低下症の場合は甲状腺ホルモン投与前に,副腎皮質機能を評価することが必要である。ACTHおよびTSH分泌低下を合併した場合,甲状腺ホルモンのみを補充すると,低下していた内因性コルチゾール代謝が促進され,副腎クリーゼを誘発するおそれがある。甲状腺ホルモンのレボチロキシンナトリウムの添付文書には,副腎皮質機能不全,脳下垂体機能不全のある患者「副腎クリーゼを誘発し,ショック等を起こすことがあるので,副腎皮質機能不全の改善(副腎皮質ホルモンの補充)を十分にはかってから投与すること」と注意喚起されている。ACTHおよびTSH分泌低下を合併している場合は,図3に示すように,先に副腎皮質ホルモンを補充し,十分に副腎皮質機能の改善を行ったうえで甲状腺ホルモンを補充する。ホルモン補充療法により,全身状態が安定するまではICIの休薬を検討する。Ⅱ.各論 10.内分泌・代謝(免疫関連有害事象,放射線療法,手術療法などがん治療に伴うもの)下垂体前葉下垂体後葉視床下部視床間脳生殖器発達,二次性徴,精子産生生殖器発達,二次性徴,月経主な生理的役割子宮収縮,射乳促進抗利尿主な生理的役割成長促進,代謝甲状腺ホルモンの合成促進・分泌乳腺発育,乳汁産生・分泌,性腺機能抑制視索上核・室傍核視交又下垂体門脈下垂体前葉視床下部下垂体後葉図1 視床下部・下垂体表2 各下垂体ホルモンとその役割220下垂体前葉ホルモン成長ホルモン(GH)甲状腺刺激ホルモン(TSH)プロラクチン(PRL)副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)副腎皮質ホルモンの合成促進黄体形成ホルモン(LH)卵胞刺激ホルモン(FSH)下垂体後葉ホルモンオキシトシン(OT)バソプレシン(AVP)

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