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b)ホルモン補充療法 ホルモン補充療法は,欠損している標的内分泌腺ホルモンの補充を原則とするが,視床下部ホルモンや下垂体ホルモン自体は半減期が短く,経口投与すると容易に分解されるため,標的内分泌腺で産生される副腎皮質ホルモン(コルチゾール)や甲状腺ホルモン(レボチロシン)などの末梢ホルモンを投与する。 ACTH分泌低下症の場合は,生理量のコルチゾール分泌を補充する副腎皮質ホルモン投与は,ICI関連下垂体機能低下症の予後改善効果に対するエビデンスがないため推奨されていないが,ホルモン補充療法により症状が安定したら,副腎皮質ホルモンが継続中であっても再投与は可能とし(irAEアトラス,小野薬品工業株式会社,ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社より引用)検査値に異常が認められる場合甲状腺ホルモン剤を含めて治療開始副腎皮質ホルモン剤で治療開始5~7 日後副腎クリーゼ発症の可能性甲状腺ホルモン剤を通常少量から開始し,2~4 週間毎に徐々に増量する(斎藤顕宜)図2 下垂体機能低下症の診断の進め方2)図3 ACTH分泌低下症とTSH分泌低下症の合併例に対するホルモン補充療法の順序ている。(1) 副腎皮質ホルモンの日内変動と投与タイミン 血中のACTHは,通常は早朝・空腹時・30分以上の安静臥位後の採血による値を基礎値とする。生理的なコルチゾール分泌は早期にピークに達し,以後低下し深夜に最低となり,午前1時から4時の間より再度増加する日内リズムが存在する。1日のコルチゾール分泌量は5~10 mg/m2と報告されており,これはヒドロコルチゾン(コルチゾール)15~25 mgに相当するが,通常ヒドロコルチゾンを15~20 mg/日を補充し,感染症,発熱,外傷などのストレス時は2~3倍に増量する。(2)副腎皮質ホルモンによる補充の実際 コルチゾールの生理的な分泌パターンを考慮して,朝に1日量の半分から3分の2を投与し,残りを6~8時間後に投与する。1日3回投与(朝:1日量の6分の3,昼:1日量の6分の2,夕:1日量の6分の1)が同量1日2回投与よりも有用である報告もある。より生物学的半減期の長い合成ステロイドホルモンであるプレドニゾロンやデキサメタゾンも使用されるが,夜間も糖質コルチコイド活性が高く,生理的でなく好ましくない。ただし,下垂体炎による腫大が著明で圧迫症状(視力や視野の障害,頭痛)を早期に改善する必要がある場合は,治療目的でプレドニゾロン1 mg/kg/日の投与を検討する場合もある。グ臨床症状と一般検査所見から下垂体機能低下症が疑われる場合 血中ホルモン基礎値測定 ① ACTH,コルチゾール② TSH,甲状腺ホルモン③ LH,FSH,テストステロン,エストラジオール④ GH,IGF-1⑤ PRL下垂体ホルモン刺激試験 ① ACTH 分泌刺激試験② TSH,PRL 分泌刺激試験③ ゴナドトロピン分泌刺激試験④ GH 分泌刺激試験A.視床下部・下垂体221↓ ↓ ↓

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