らに,患者だけでなく家族にも教育や指導を多職種で介入できるように医療チームにおける調整役割ももっている。患者自身が体の感覚のセンサーをはたらかせられるようにセルフケア能力を高めるための支援を行い,日常生活の対処方法や生活の工夫をすることによって,治療を受けながら,QOLの高い生活を送ることができるように支援していくことが看護師の重要な役割である。下垂体機能低下症マネジメントにおける薬剤師の役割(看護師,医師と連携して) 薬剤師は,ICI投与前から併用薬剤の下垂体機能への影響について検討を行う。また,irAEの早期発見,治療に向けて看護師と共に患者教育を担う。早期発見のためには,ICI毎の特徴を理解することが重要である。抗CTLA‒4抗体薬による下垂体機能低下症の発症頻度は5~17%程度,下垂体炎は4~10%程度と報告があり,複数の下垂体前葉ホルモンが障害される場合が多い。抗CTLA‒4抗体薬による下垂体炎の発症例の内訳は,ACTH分泌低下症(91%),TSH分泌低下症(84%),ゴナドトロピン分泌低下症(83%)が多く,GH分泌低下症(43%)やPRL分泌低下症(9%)よりも高頻度で認められている。一方で,抗PD‒1抗体薬や抗PD‒L1抗体薬による下垂体機能低下症の発症頻度は,0.3~1%程度と報告されており,ACTH分泌低下症のみの発症が多い。下垂体機能低下症の機能については本項「4)ICIによる下垂体機能低下症の治療」で詳しく解説する。 ゴナドトロピン分泌低下症は,直ちに生命の危機を及ぼすものではないが,月経異常や不妊,性欲低下,インポテンスなどQOLを落とす可能性がある。妊孕性獲得のためにhCG‒rFSH(hMG)療法が選択される場合がある。ゴナドトロピン分泌を低下させる薬剤として,LH‒RHアゴニスト製剤,LH‒RHアンタゴニスト製剤等があり,これらを投与中の患者はゴナドトロピン分泌低下症の診断の除外規定となる。 PRL分泌低下症は,男性には明らかな症状は起Ⅱ.各論 10.内分泌・代謝(免疫関連有害事象,放射線療法,手術療法などがん治療に伴うもの)(奥出有香子)ICIによる下垂体機能低下症症状の早期確認における看護師の役割(薬剤師,医師と連携して) さまざまなホルモンのはたらきをコントロールする脳の下垂体(内分泌器官)に障害が起こり,前述に記載された症状があらわれる。初期症状(疲れやすい,だるい,食欲不振,頭痛)下垂体機能低下症の症状および徴候は,基礎疾患や,欠乏または欠如している特定の下垂体ホルモンに関係する。発症は通常潜行性であり,患者に認識されない場合もあるが,ときに突然または劇的に発症する。分泌量が減少している下垂体ホルモンの種類によって症状は多岐にわたる。 最も深刻なのはACTHの分泌低下で,副腎不全に陥る。食欲不振,体重の減少,重度の倦怠感といった症状があらわれ,命に関わる場合もある。また,TSHが不足すると冷え性,体重増加,皮膚の乾燥などが起こる。そして,成長ホルモン(growth hormone;GH)の分泌が低下すると子どもの成長状態が悪くなるほか,大人では体脂肪の増加や筋力低下などの症状が出る。黄体形成ホルモン(luteinizing hormone;LH),卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone;FSH)は,性腺機能の発達や性欲に関わるホルモンで,減少すると女性では無月経や不妊,男性では性欲低下や勃起障害が起こる。プロラクチン(prolactin;PRL)は母乳の産生に関わるホルモンで,減少すると母乳の量が減ったり,出なくなったりする。1) 下垂体機能低下症症状における早期発見に 看護師は,ICIにて治療中の患者の症状や体調について,いつもと少し違うと感じる内容などを含めて,体調を確認する役割がある。看護師は,患者からの体調や症状を医師や薬剤師に伝え,患者の苦痛が軽減できるようにはたらきかける役割がある。また,緊急を要する状態の場合は,早急に医師に伝えたうえで,迅速な対応が求められる。看護師は,患者自身の体調をモニタリングできるように多職種でチームアプローチを行い,さ222看護師の関わりおける看護師の役割薬剤師の関わり
元のページ ../index.html#16