・チーム医療の実践 保健・医療・福祉・介護および患者に関わるすべての人々の役割を理解し,連携する。・医療の質と安全の管理 患者および医療者にとって,良質で安全な医療を提供する。・社会における医療の実践 医療人として求められる社会的役割を担い,地域社会と国際社会に貢献する。 コミュニケーション能力やチーム医療の実践において,患者と家族との対話を通じて,良好な人間関係を構築し,さまざまな専門職種と連携し,良質な医療を提供する人材を育成することが示されている。2) 医師・患者間のコミュニケーション 医療におけるコミュニケーションは,医師・患者関係の基盤となるものである。コミュニケーションにおいて,多くの選択肢(治療だけでなく,診断手法,治療後のケアや療養方針も)について,患者が自律的な意思決定を行うために必要とされるすべての情報を提供されることが求められる。複雑な医学的な診断,予後,治療方法をわかりやすい言葉で,さまざまな選択肢とそれぞれについての利害得失を理解させ,質問に対応し,患者の意思決定を支えるための支援も併せて行う必要がある。医師・患者間のコミュニケーションにおける障壁は,言葉や文化的な背景が含まれる。識字率が高い日本では言語のやりとりは比較的行いやすいものの,専門用語を用いた説明,治療経過や副作用のリスク,予後の説明など,センシティブな情報の伝え方と受け止め方には,期待や認知によるバイアスなどさまざまな要素が影響を及ぼす。病気の成因や性質,治療方針の選択においては,患者指針が健康状態と治療方針についてどれだけ理解しているかを探りながら,医師として適切に情報を伝え,患者の想いに寄り添いながら,なすべき努力を払うことになる。患者が必要とする情報,診断や治療の選択肢について,医師がすべての情報を伝えることができれば,患者はどのような方針で治療やケアを進めるかを自らの意思で決定することができる。インフォームド・コンセントは治療を受けないことやほかの治療を選択すること,セカンドオピニオンを受ける機会を保証することも含まれる。3) 支持医療におけるチーム医療の必要性 がんにおける支持医療が実践されるにあたり,治療にあたる医師が一人で患者の治療やケアを担うのではなく,多分野の専門領域からなる医師,看護師,薬剤師,理学療法士,検査技師,放射線技師,栄養士,ソーシャルワーカーなど,多くの医療専門職の支援のもと,患者にとって最適な医療が提供されるようになってきている。その結果,伝統的な医療パターナリズムの権威主義から,意思決定についての協力型・協調型のモデルが一般的になりつつある。それぞれの専門職としての職能や倫理的責任のもとに,一方的な意思決定ではなく,ときには意見の対立や競合などが起こりながらも,最適解を対話によって見出していくようになってきている。こうしたチーム医療が実践されるにあたり,参画する医療職は患者の最善のために,自らの提案を行いながら,患者と関連職種双方からの希望や提案に応えていく役割が求められる。そのためにはコミュニケーション能力に加え,それぞれの意見に対する理解や患者の診療に関わるさまざまな人々との間に生じる衝突を解決する能力も必要になる。 チームが展開される場所や,医療・介護・福祉職種の組み合わせは多様であり,患者・家族など当事者の参画についてもさまざまであるが,情報を把握したうえで課題を共有し互いに専門性を発揮して対応するアプローチにより,①医療・生活の質の向上,②医療従事者の負担軽減,③医療安全の向上のアウトカムが期待される。 チーム医療を推進するためには,患者に対して最高の医療を提供するために患者の生活面や心理面のサポートを含めて各職種がどのように協力するかという視点をもつことが重要である。また,患者も自らの治療等の選択について,医療従事者からの十分な説明を踏まえて選択等に参加することが必要であり,意思決定に必要な情報提供や理解しやすいツールの活用,疑問や不安への対応などが重要な要素といえる。多職種が参加するカンⅠ.総論 5.支持医療の担い手とコミュニケーション74
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