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ファレンスにおいては,ほかの職種を尊重するファシリテーション能力を発揮できるように継続的に学修することも重要である。 チーム医療の基本的な考え方は,さまざまな医療現場で共通するものであるが,具体的には急性期,回復期,維持期,在宅期においてそれぞれ異なるものであり,現場におけるチーム医療を推進するための具体的な方策を考えるともに,各々のチーム医療が連鎖するような仕組みの構築が必要である。 医師の診療は,患者の訴え・症候・所見などをもとにしたさまざまな状況に基づく判断によってなされる。正確な診断と効果的な治療がなされることによって,患者の健康状態を改善向上し,生活の質(QOL)をよりよくすることを目指す。そのためには,診断・検査・治療・ケアなどさまざまな場面において診療上の決定(clinical decision making)を適切に実施していくことが求められる。 一方で,診断や治療の高度化や生命の質の向上への希求,コストやアクセスの議論,医療の質の改善など,がん医療を取り巻く環境の変化に伴い,医療上の判断にあたっては,予後の改善に加え,QOLの向上,社会的・倫理的な分析など,さまざま視点での考慮が必要になってきている。 がんの支持医療の目指すものは,複数の診療やケアの選択肢のなかから,患者の予後とQOLを最も大きく改善するものを実践することであるが,それに至るまでには,医療的な側面に加えて,精神心理的,社会的側面などさまざまな角度からの分析や合意形成を必要とする。患者の疾病の状況,医療環境,生活環境などを関連する専門職種と連携していくための広い視野とコミュニケーション能力が求められる。 看護師の役割の一つに意思決定支援がある。看護師は,個々の患者の価値観を尊重し,自律した意思決定を支援する。このとき,①意思決定能力の把握,②情報の理解の支援,③価値観の明確化の支援,④コミュニケーション能力の拡大が重要である。①患者の意思決定能力の把握には,患者だけでなく,支援者の能力や関係性も把握する。特に若年者や高齢者においては支援者の存在が重要である。②患者が情報を理解するには,意思決定に必要な情報が得られていること,患者の人生や生活における意味を理解していることが重要である。がん医療には患者や家族にとって難解な用語が多い。特に,医学用語,疫学統計用語,治験データの解釈に誤解がないことを確認し補足する。医療者が「どう伝えたか」よりも,患者や家族が「どのように理解したか」が重要である。情報量は多ければ良いというものではなく,個々の対象の状況や価値観に応じた必要性と,患者の情報処理能力を考慮する。患者や家族がインターネットや知人などから情報を得ている場合があり,それらを正しく理解しているかを把握することも必要である。③患者が自己の価値観を明確にすることは,自律した意思決定において重要である。看護師は,患者が自身のこれまでの人生や生活を振り返り,自分の思いと向き合い,それを言葉にすることを促す。このプロセスは,患者の気持ちの混乱を解くことにもつながる。その後,患者が自己の価値観と照らし合わせて意思決定を行うことを導く。④患者がコミュニケーション能力を発揮することは,日々変化する状況や思いを医療者や患者を取り巻く人々に伝え,がんサバイバーとしての人生を主体的に送ることにつながる。看護師は,患者のコミュニケーション能力をアセスメントし,能力の拡大と,発揮しやすい環境づくりを行う。患者の言葉にならない思いを引き出し,患者が自己の状況や思いを自らの言葉で発信できるように導く。状況に応じて,看護師は代弁者となることも必要である。 看護師は,混乱,怒り,揺れ動く思いに,常に寄り添いながら,個々の患者にとって必要な意思決定までの時間を確保する。また,同意の撤回の権利があることを知らせておくことも重要である。 家族や周囲の意見と患者の意見が異なる場合が(渡邊清高,西森久和,大野真司)A.チーム医療・地域包括ケア・Team STEPPs 75医師の関わり看護師の関わり

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