図5 内鼠径輪周囲の層構造(横断面)2 皮膚から腹膜までの腹壁の解剖学的筋膜構造部の筋膜構造を示す。図5にはヘルニア門レベルにおける横断面の筋膜構造を示す。この図4, 5の理解はT-TAPPでは最重要項目となるので,しっかり理解して欲しい。ヘルニア門(内鼠径輪)周囲は腹腔内から見ると,内側から腹膜・深葉・浅葉・横筋筋膜の順に4層の筋膜構造に大きく分けることができるが,下腹壁動静脈,精巣動静脈や精管,陰部大腿神経や外側大腿皮神経をはじめとした痛覚神経系などがどの層構造に位置するかを理解することが重要である。近年報告されている腹直筋後床で下腹壁動静脈を覆う線維組織のattenuated posterior rectus sheath (以後APRS) は,実際には浅葉とは発生の異なる腹壁層の線維組織と思われる。この2層については早川なりの理論を持ち合わせているが,本書は手術手技を中心とした解説書であるため,解剖に関する解説は割愛する。T-TAPPの手術手技を簡便化するために,手術操作上は腹壁側の浅葉とAPRSは同一の筋膜構造と考えてもT-TAPPの手術操作に支障がないことから,腹壁側では同一の線維組織構造の浅葉(APRS)として解説する。図6はT-TAPP,TEP,鼠径部切開法の到達するアプローチ位置を矢印 () で示した。前述した図4, 5の鼠径部の筋膜構造の解剖認識がしっかり理解できていれば,各手術の施行時にも解剖がはっきり理解でき,手術時に大きな誤認がなくなることで合併症や再発が防止できる。31APRS:attenuated posterior rectus sheath腹膜前筋膜浅葉臍動脈索腹壁側痛覚神経(腸骨鼠径神経,腸骨下腹神経)精管・精巣動静脈背側痛覚神経(陰部大■神経,外側大■皮神経,大■神経前皮枝)腹膜前筋膜深葉腹膜(ヘルニア門)spermatic sheath膀胱
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