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第1章870第8章 T-TAPPの手術手技と手術手順(L型:外鼠径ヘルニア)右側L型ヘルニアはヘルニア門の外側からのアプローチ,左側L型ヘルニアはヘルニア門の内側からのアプローチを原則としている。左右のヘルニアでアプローチを変更している理由は,通常の腹腔鏡下手術と同様に常に右手を優位側として主操作を行うためである。T-TAPPでは5, 5, 3 mmポートを使用していることから左手の3 mm鉗子は把持のみであり,エネルギーデバイスなどは使用できない。T-TAPP理論をマスターすれば,右手5 mmの優位側のみの鉗子操作だけですべての手術は完遂できる。左手に5 mmポートを使用していれば,角度的に右手操作では剥離や展開が困難な場合には,左手右側L型ヘルニアの腹腔内からの画像と重要な基本的解剖認識を画1a , bに示す。画2には,右側❶ステップ1 切開開始位置とヘルニア門背側の腹膜剥離 ・解剖の章(第4章)の画3, 4, 5で述べたように,精管〜精巣動静脈の外側までは精索成分の自由度を高めるために可動性があり,腹膜と深葉の融合は認められない。その外側では次第に腹膜と深葉は融合する。内側の精管上方からヘルニア門の上縁の腹壁側では,ヘルニア門に対して精管左側の7時の位置から腹壁側の上縁を含めた3〜5時の位置まではほとんどの症例で腹膜と深葉は合流か融合して1枚の層構造になっていると考えた方が良い。・T-TAPPでは,腹膜と深葉が融合していない精巣動静脈の外側ギリギリの腹膜を持ち上げ,UADにて2, 3 mmの切開から開始する(画3a , b) (8-01)。・腹膜のみの切開がうまくできていれば,切開内側に超音波凝固切開装置(UAD:ultrasonically acti-vated device)や電気メスなどのエネルギーデバイスを持ち替えて使用しても良いと思われる。T-TAPPではJSES技術認定審査の共通基準でも重要視されている優位側手術操作を大切にして,常にエネルギーデバイスは右手優位側で操作し,左手操作を行わないように若手外科医には指導している。T-TAPPでは5 mm直視硬性鏡のみを使用し,左右L,M,F型のすべての症例を左手3 mm鉗子,右手5 mm(優位側)鉗子の操作だけで手術は完遂できる。L型ヘルニアの腹膜切開の開始点と手術手順を記入しており,以下に手術手順を詳細に解説する。の腹膜を持ち上げるか内側臍ヒダを内側・頭側に牽引すると腹膜下で腹膜と深葉との間に気腹の炭酸ガスが浸潤拡散する (画4a , b , c)。腹膜を持ち上げヘルニア嚢の先端・尾側に向かって腹膜のみを縦にUADで切開する(画5a , b) (8-02)。ヘルニア嚢の外鼠径輪レベルまで切開するとヘルニア嚢全体の可動性が良好となり,腹膜と深葉の間にさらに炭酸ガスが浸潤拡散し,parietalizationの領域の剥離が容易となる。・T-TAPPでは,この背側の腹膜と深葉との剥離操作時にトロックスガーゼを使用し,精管と精巣血管は深葉の背側に遊離し,外側では腹膜と深葉の融合ラインまでを愛護的に剥離し, 完全なparietaliza-tionの領域を確保する注)(画6a , b) (8-03)。1ヘルニア門環状切開 定型的な右側L型ヘルニアの手術手技 (外側アプローチ) (右L型 基本動画)T-TAPPの手術手技と手術手順(L型:外鼠径ヘルニア)

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