a2内鼠径輪とlateral triangle下腹壁動静脈bIliopubic tract大■輪2 皮膚から腹膜までの腹壁の解剖学的筋膜構造型) が脱出する内鼠径輪,内鼠径ヘルニア (M型) が脱出するHesselbach三角, 大腿ヘルニア (F型) が脱出する大腿輪のすべてを含んでいる(図1a, b,画1a, b)。腹膜剥離後には,MPOの最内側のHesselbach三角の内側縁である腹横筋腱膜弓と腹直筋の合流部位が正確に確認できていること,内鼠径輪の外側三東京医科歯科大学解剖学名誉教授である佐藤達夫先生は,1980年に体壁層は皮膚と腹膜が筋層を中心に対称に存在していると報告し,鼠径部も同様の構造であると示した(図2)。腹腔内側から見た腹壁構造は,腹腔内から①腹膜,②腹膜前筋膜深葉(以後 深葉),③腹膜前筋膜浅葉(以後 浅葉),④横筋筋膜の順に4層の筋膜構造が存在すると考えると理解しやすい。本書ではT-TAPPの手術時に腹腔鏡画像で認識される筋膜構造を簡単にこの4層に絞り,腹腔内から見て,腹膜・深葉・浅葉・横筋筋膜の4層の構造を基準とした手術操作を解説する。それ以外にも様々な発生学的筋膜構造,層構造があるとする諸説も多々見受けられるが,T-TAPPの手術操作を解説する上では,前述したこれらの4層構造をしっかり認識するだけで十分である。画1 腹腔内から見た腹膜剥離後の左側MPOa:腹腔鏡画像b:解剖認識角(lateral triangle)を認識していることが重要である。2Dによる平面的な手術映像では,この外側三角の立体的構造を見落とすことがあり,再発の大きな原因の一つとなることから注意が必要である。TAPPでは腹腔内からMPOを正確に確認し,メッシュのオーバーラップはMPOから少なくとも3 cm展開することが推奨されている。鼠径部は睾丸下降などの発生学的な影響により複雑な体壁構造となっている。腹膜鞘状突起の開存により発生する内鼠径輪周囲(L型ヘルニア門)の腹壁構造は背側から腹側にわたって全周性に円柱状に各層が存在する。標準的鼠径ヘルニアでは,図1の腹腔内側にある筋膜構造がそのままヘルニア嚢として伸びて,鼠径管内に脱出したような構造となっている(図3)。この4層の筋膜構造が全周性に維持されながら,睾丸下降と共に腹膜鞘状突起の開存部が押し出されるように脱出していると考えると理解しやすい。T-TAPPではその筋膜構造や神経走行を認識することで,再発や疼痛などの合併症が少ない手術となり,手術操作は定型化され,手術時間も短縮される。図4にはL型ヘルニアの傍矢状断における鼠径29クーパー靭帯Hesselbach三角(鼠径管後壁)皮膚から腹膜までの腹壁の解剖学的筋膜構造 (4-01)
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