(2)限局性GISTの外科治療と術前・術後補助療法 5 cm未満の比較的小さなGISTに対しては腹腔鏡下手術が行われることが多いが,5 cm以上のGISTあるいはGISTを含む悪性腫瘍が強く疑われるSMTに対する腹腔鏡下手術の適応に関しては不明であったため,外科3(CQ)を設定した。腫瘍径5 cm以上で,開腹手術と腹腔鏡下手術のアウトカムが比較可能なメタアナリシス4‒6)の結果などから,5 cm以上のGISTに対しても腹腔鏡下手術は適応となると考えられるが,8 cmを超えるGISTに対するエビデンスは乏しく,開腹手術を上回るメリットが得られない大きさのGISTには推奨されない(アルゴリズム4,外科3(CQ))。また,外科切除が適応となるGISTに対しては,臓器機能温存手術を目指すべきであるが(外科4(BQ)),より重要なのは腫瘍破裂を回避し完全切除を行うことである。このため,10 cm以上の胃GISTを対象に術前補助療法の有用性が日韓合同の多施設共同研究(第Ⅱ相臨床試験)で検討され,高いR0切除率が示された7)。腫瘍径が10 cm以上のような大きなGISTや,非治癒切除,特に術中の腫瘍破裂を生じる可能性が高いと判断されるGISTはイマチニブによる術前補助療法の適応となり得る(アルゴリズム5,外科5(CQ))。また,術前もしくは術中に腫瘍破裂が確認された場合は,基本的にイマチニブによる術後補助 1 総論 転移のない切除可能な限局性GISTと診断された場合,基本的に外科切除の適応であるが,腫瘍の大きさや解剖学的局在などによって治療方針や術式が異なる可能性がある。切除不能・転移・再発GISTに対する初回治療の第一選択はイマチニブ投与であるが,薬剤耐性により二次治療へ移行した後は治療に難渋することもあり,チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor;TKI)治療中における外科治療も検討課題である。 1 原発GISTに対する外科治療(1)切除可能な限局性粘膜下腫瘍の治療方針 本邦においては消化器内視鏡検診などにより,比較的小さな胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor;SMT)が発見されることが多い。このため主に胃SMTを念頭に,アルゴリズム4「切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針」を作成した。特に2 cm未満の胃SMTで組織学的にGISTと診断された場合や,2 cm以上,5 cm未満のSMTに対する治療方針に迷うことがあるため,外科1(CQ),外科2(CQ)を設定した。2 cm未満の胃GISTに対する予後解析や外科切除の有用性を示した報告はないが,切除症例の後ろ向きコホート研究の結果1,2)や,外科切除の安全性と完全切除率が高いこと3)などから,組織学的にGISTと診断またはGISTを疑う悪性所見を認める場合には,外科切除の適応となり得る(アルゴリズム4,外科1(CQ))。2 cm以上,5 cm未満のSMTも同様に,GISTと診断あるいはGISTを含む悪性腫瘍が強く疑われる場合は,外科切除の適応とすべきである(アルゴリズム4,外科2(CQ))。42 外科治療領域外科治療領域
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