1.総論 27病理診断領域(2)鑑別診断 GISTと鑑別すべき腫瘍のうち,主に紡錘形細胞から成る腫瘍としては,平滑筋腫,平滑筋肉腫,神経鞘腫,デスモイド,炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor;IMT),孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;SFT)などがある。類上皮細胞からなる腫瘍としては,低分化癌,カルチノイド(神経内分泌腫瘍),悪性黒色腫,グロームス腫瘍,PEComaなどがある1)。 2 GISTの再発リスク分類(1)分類方法 転移のみられないGISTの場合には,良性または悪性と診断するのではなく,腫瘍径と核分裂像数を組み合わせた再発リスク分類が行われ,超低リスク(very low risk)・低リスク(low risk)・中リスク(intermediateまたはmoderate risk)・高リスク(high risk)に分類される。早くからいわゆるFletcher/NIH分類(表1)が用いられてきた2)。GISTは腫瘍発生部位により予後が異なることが示唆されており,腫瘍径・核分裂像数とともに発生部位を考慮に入れた,いわゆるMiettinen/AFIP分類も再発リスクを推定する基準として用いられている(表2)3)。さらに局所再発・腹膜播種の強い危険因子である腫瘍破裂を加えたmodified Fletcher/Joensuu分類が,再発高リスク群を効率的に選択する分類法として有用と報告されている(表3)4,5)。 同じ腫瘍でも,用いる分類方法によりリスク評価が異なる場合がある。また,これらの分類では,腫瘍径や核分裂像数が基準値の境界付近の場合,判定によりリスク評価が大きく変わる場合がある。一方,Contour mapsは腫瘍径と核分裂像数・部位・腫瘍破裂を指標として再発 1 総論 1 GISTの病理診断(1)組織像と免疫染色 GISTは組織学的に紡錘形細胞あるいは類上皮細胞からなる1‒3)。紡錘形細胞型では腫瘍細胞が束状あるいは渦巻き状に配列し,小腸発生例ではしばしばskeinoid fiberと呼ばれる好酸性物質の沈着を伴う。類上皮細胞型では円形核を有する上皮様細胞が一様にシート状に増殖し,しばしば粘液腫状基質を伴う。いずれの細胞型においても,種々の程度に出血,壊死を伴うことがある。 免疫染色では95%の症例でKITが陽性で,60~80%にCD34が陽性である1‒3)。平滑筋アクチン,S‒100蛋白の陽性率はそれぞれ20~40%, 5%程度である。GISTの約5%が免疫染色でKIT陰性であるが,その多くが胃に発生し,類上皮細胞形態を示し,PDGFRA遺伝子変異を有する。DOG1は,KIT陽性・陰性に関わらず,ほとんど(95%以上)のGISTで陽性になり,診断的価値が高い。病理診断領域
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