解説乳がんと診断されたら Q733標準治療とは何ですか。標準治療とはどのような治療ですか乳がんの治療には,外科療法(手術など),薬物療法(ホルモン療法や分子標的治療,抗がん薬など),放射線療法などがあります。実際に個々の患者さんで治療方針を決める際は,それらの中から適切な治療を組み合わせて決めていきます。乳がんに関して,基礎医学の研究や臨床試験といわれる患者さんが参加する研究が多く行われています。こうした研究の進歩により,乳がんは一人ひとりの患者さんで性質が異なり,最適な治療法もそれぞれ異なるということがわかってきました。そして,専門家が世界中の研究の成果を集めて,有効性と安全性を確認し,現時点で最善の治療として合意したものが「標準治療」です。標準治療は,一つだけとは限らず,複数の治療法が示される場合もあります。「標準」治療というと「並みの」治療でしかないのではないかと誤解される方もおられるかもしれませんが,標準治療は「現時点で,患者さんに最も効果が期待でき,安全性も確認された,最善の治療」ということをご理解ください。マスコミなどで「最先端の治療」とされる治療と標準治療ではどちらが良いのですか標準治療のほうが良い治療といえます。マスコミなどで「最先端の治療」という言葉を目にすることもあると思います。より良い治療を受けたいと思われることは当然のことですが,「最先端の治療」と「最善の治療」は異なります。新しい治療方法の開発には,まずは薬の候補となる物質や仕組みを探すことから始まります。可能性がありそうなものの場合には,細胞やネズミなどの実験動物を使って実験をします。この結果から,人への応用ができそうなことがわかったら,臨床試験によっ「標準治療」とは,多くの臨床試験の結果をもとに専門家が集まって検討を行い,専門家の間で最善であるとコンセンサス(合意)の得られている治療法のことをいいます。乳がんの標準治療は一つとは限らず,状況に応じてさまざまな選択肢があります。一人ひとりの患者さんで最適な治療法は,乳がんの進行の度合い,乳がんの性質,患者さんの状態や意向などによって異なります。ご自身にとって最善の治療を受けるためには,まず自分の乳がんについて正しく理解すること,自分の乳がんに対する標準治療が何であるかを知っておくことが重要です。AQ7
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