初期治療について−手術 Q2081行わず,リンパ節転移の有無を調べる方法としてセンチネルリンパ節生検が開発され,世界中で実施されています。センチネルリンパ節にがん細胞がなければ,そ れ以外のリンパ節に転移がある可能性は非常に低いと考えられますので,腋窩リンパ節郭清を省略できます。センチネルリンパ節に転移がある場合は,原則として腋窩リンパ節郭清を行いますが,センチネルリンパ節の転移が微小(2mm以下)であった場合は,その他のリンパ節に転移が存在する可能性は低いため,腋窩リンパ節郭清を省略することも可能です。さらに,センチネルリンパ節に2mmを超える転移があっても,一定の条件(条件:①センチネルリンパ節への転移が2個以下,②乳房のしこりの大きさが5cm未満,③術後に腋窩を含む放射線照射を施行,④術後薬物療法を施行,など)を満たす場合には,腋窩リンパ節郭清を省略しても生存率は低下せず,遠隔再発率も上昇しないという報告から,腋窩リンパ節郭清を省略することも可能です。腋窩リンパ節郭清を省略するかどうかは,これらのデータをもとに担当医と手術前によく相談して決めてください(☞Q21参照)。なお,センチネルリンパ節生検は,確立された標準的な方法ですが,具体的な手技については,各施設でかなりばらつきがあります。例えば,センチネルリンパ節をみつけるのに使う薬剤や,それらを乳房のどこに注射するかも施設によってさまざまです。また,熟練した乳腺外科医を中心としたチームが行っても,センチネルリンパ節がみつからない場合もあります。センチネルリンパ節生検の方法通常,センチネルリンパ節生検は乳房の手術の際に同時に行います。腫瘍の周りや乳輪に微量の放ほう射しゃ性せい同どう位い元げん素そ(わずかな放射線を発する物質,アイソトープ)あるいは色素を注射すると,その放射性同位元素(または色素)はリンパ管を通じてセンチネルリンパ節に集まります。放射線が検出されたり,色に染まったりしたリンパ節(センチネルリンパ節)を摘出して,転移の有無を顕微鏡で調べます。最近では,蛍光色素と赤外線カメラを用いた蛍光法も普及してきました。センチネルリンパ節生検の信頼性センチネルリンパ節生検は,大規模な臨床試験の結果,十分信頼できる方法であることが確認されています。つまり,センチネルリンパ節への転移の有無で腋窩リンパ節郭清をするかどうかを決めた患者さんと,センチネルリンパ節への転移の有無にかかわらず腋窩リンパ節郭清を受けた患者さんでは,生存率が変わらないということが報告されています。センチネルリンパ節生検の合併症センチネルリンパ節生検に用いる色素で,まれにアレルギー症状が出ることがあります。また,皮膚に色素の跡が残りますが数週間で消えます。一方,放射性同位
元のページ ../index.html#8