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 日本乳癌学会における認定医・専門医制度の目的は,乳腺疾患の診療・研究にあたる医師の専門的な知識と技能を高めることにより医療の質の向上に貢献し,乳癌死亡の減少を目指すことにある。これを実践するためには,総合的な力を有する良質な乳腺専門医の輩出が必要不可欠であり,本制度の大きな使命である。 一方,各学会主導で認定されていた専門医の質を担保する目的で,2014年5月に日本専門医機構(以下,機構)が発足し,制度の整備が進んできた。1階部分の基盤となる学会も,外科,内科,放射線科,産婦人科などが決定し,学会の認定する専門医制度とともに,機構が認定する新たな専門医制度の構築が本格的に進展することとなった。 2021年4月,厚生労働省の指導のもと,日本外科学会を基盤に,この2階建て部分として,消化器外科,呼吸器外科,心臓血管外科,小児外科,内分泌外科に加えて乳腺外科の6領域の専門医がサブスペシャルティとなることが,機構より正式に承認された。 機構が認定する新たな「乳腺外科専門医」に関しては,外科専門プログラム研修の2年目(卒業後4年目)から,連動研修として機構が承認した乳腺外科専門医研修カリキュラムに入ることができ,各専門研修カリキュラム統括責任者が修了評価を行う。このカリキュラムは3~5年で修了評価が行われ,修了認定後,最短で卒業後7年目に「乳腺外科専門医」の試験を受験できることになる。専門医認定に関しては,日本乳癌学会が筆記試験,面接試験を行い,機構がその結果を承認し,「乳腺外科専門医」として認定する。一方,現行の日本乳癌学会が認定する「乳腺専門医」に関しては,外科系は将来的には機構の認定する「乳腺外科専門医」に移行する予定であるが,外科系以外は引き続き,日本乳癌学会が「乳腺専門医」として認定を継続する方針であることが機構より示されている。 このような背景のもと,「乳腺腫瘍学」は専門医を目指す先生方の教科書的な書籍として日本乳癌学会から発刊され,改訂を重ねている。「乳癌取扱い規約」ならびに「乳癌診療ガイドライン」と併せて,乳腺疾患の基礎から臨床に関連した知識の整理にご活用いただければ幸いである。 現行の乳腺専門医試験では,専門領域にかかわらず,すべての分野が共通問題として出題されている。これは,乳腺専門医はセカンドオピニオンに対応できるよう乳腺に関する幅広い知識が必要である,との観点から,外科系の先生には,診断,薬物療法についても,内科系および放射線科系の先生には手術療法についても,一定の水準で理解していただかなければならないからである。この点は新専門医制度における乳腺外科専門医も同様で,この「乳腺腫瘍学」が重要な情報源となることは間違いない。 最後に,「乳腺腫瘍学」はこれから専門医を目指す先生方だけでなく,すでに専門医資格をおもちの先生方にも,知識を整理し,最新の情報を得るためのテキストとしてご活用いただければ幸いである。日本乳癌学会 専門医制度委員会委員長 石 田 孝 宣xxiii専門医制度と教育システム

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