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1 目 的 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn’s disease:CD)の患者数は本邦において増加傾向にある。IBDの長期経過例には消化管腫瘍発生のリスクがあることが知られているが,その臨床病理学的特徴は散発性消化管腫瘍とは異なっている部分が多く,それに伴い診断と治療においても異なっている部分が多い。しかしながら散発性大腸癌などに比較して,IBD関連消化管腫瘍の診断や治療に関するエビデンスは乏しく,診療に関わる知識も広く浸透しているとはいえないのが現状である。 そのような状況をふまえて,①IBDに関連する悪性疾患(主に消化管癌)の診断と治療に関して,明らかになっている事項と,解決すべき事項を示すことによって,②IBDを専門としない臨床医はIBD関連消化管腫瘍の診療に関する現状を知り,専門医との連携をスムーズにし,③IBDを専門とする臨床医は現時点で明らかになっている標準的診療と課題を知ることで,④IBD関連消化管腫瘍患者の治療成績を向上させることを目的として本ガイドラインは作成された。 2 使用法 本ガイドラインは,文献検索で得られたエビデンスを尊重するとともに,日本の医療保険制度や診療現場の実状にも配慮した大腸癌研究会および厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のコンセンサスに基づいて作成されており,診療現場において炎症性腸疾患関連癌の診療を実践する際のツールとして利用することができる。具体的には,個々の症例における診療の方針を立てるための参考となることのほかに,患者に対するインフォームドコンセントの場でも活用できる。ただし,本ガイドラインは,IBD関連消化管腫瘍に対する診療の方針を立てる際の目安を示すものであり,記載されている以外の診療方針や治療法を規制するものではない。本ガイドラインは,本ガイドラインとは異なる診療方針や治療法を選択する場合にも,その根拠を説明する資料として利用することもできる。 本ガイドラインの記述内容については大腸癌研究会が責任を負うものとするが,個々の治療結果についての責任は直接の治療担当者に帰属すべきもので,大腸癌研究会およびガイドライン委員会は責任を負わない。 3 対 象 本ガイドラインの利用対象者は,IBD患者の診療に携わるすべての臨床医が中心である。2 総 論

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