1 目的と対象,記載法1.1 目的 食道癌取扱い規約(以下,本規約)は,1969年に日本食道疾患研究会によって作成され,2003年の組織改変に伴い日本食道学会に継承された。本規約は,食道癌治療成績の向上を図ることを目的とし,そのため同一基準に則って臨床・病理・統計的資料を得る手段としての食道癌の取り扱い方法を規定するものである。日本食道学会は,本規約を時代とともに改訂し,また,他の消化管の癌取扱い規約との整合性を保ち,国際的にも受け入れられるよう努力する。2 第1部 規約1.2 対象 本規約で取り扱う食道癌とは,原発性に食道に発生した癌をいい,続発性に発生した癌は除外する。 食道に原発した癌以外の腫瘍に関しても,本規約に準拠した記載をすることが望ましい。 これらの対象は,治療前,治療時および切除標本の所見に大別して扱われる。註)続発性に発生した癌とは他臓器がんの転移等を意味する。放射線照射後の影響等による二次性の食道1.3 記載法 所見の記載の順は,占居部位(切歯列からの距離も併記),周在,長径,病型分類,組織型(組織型が判明した場合),壁深達度,リンパ節転移,臓器転移,進行度とする。 例: Mt(31—36 cm),前壁側1/2周,5 cm,2型,中分化扁平上皮癌,pT3,pN2,cM0,fStage Ⅲ 病理所見の記載の順は,占居部位,長径,病型分類,組織型,壁深達度,浸潤形式,リンパ管侵襲,静脈侵襲,壁内転移,断端(近位,遠位,深部切離面),多発癌,治療効果,リンパ節転移とする。 例: Mt,5 cm,2型,中分化扁平上皮癌,pT3,INFa,Ly1a,V1a,pIM0,pPM0,pDM0,pRM0,多発癌(あり,2病変),CRT—Grade 2,pN1(2/30),cM0,fStage Ⅲ癌は続発性ではなく,原発性として扱う。1.3.1 記載法の原則および略記法 description and abbreviation 所見を示す壁深達度(T),リンパ節転移(N),臓器転移(M)などは,すべて大文字で表記する。それらの程度は,所見記号の後に大文字サイズのアラビア数字で示し,不明の場合はXを用いる。診断時期による3種の所見,すなわち,臨床所見(clinical findings),病理所見(pathological findings)および総合所見(final findings)は,小文字のc,p,fを所見記号の前に付けて表す。ただし,final findingsを示すfは,省略することができる(表1‒1,表1‒2)。なお,外科切除例,内視鏡切除例における記載上のチェックリストを表に示す(表1‒3,表1‒4)。
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