ii 2015年に第11版が発刊されてから7年経過し,第12版を発行することとなった。 今回の改訂においては,術前治療の重要性が高まっていることを勘案し,術前診断に関する記載,特に治療方針に大きな影響があると考えられるT4診断およびリンパ節転移診断について,大幅に追加・修正するとともに,治療効果判定規準についても改訂を加えた。また,領域横断的がん取扱い規約との整合性を図るように改訂を加えた。 前回の改訂からの継続検討事項として,UICCのTNM分類と可能な限り整合性が図られたが,UICCのTNM分類第7版では日本食道学会の全国登録のデータが反映されていないこと,鎖骨上リンパ節の取り扱いが全く異なるため,N分類の整合性は見送られていた。今回は,N分類も含め,TNM分類との整合性を図るべく,転移個数による分類を採用した。また,全国登録のデータをもとにリンパ節転移状況と生存率から郭清効果が検討され,領域リンパ節の群分類が変更されていたが,再発頻度も検討することで,より実臨床に即した領域リンパ節を策定した。これらリンパ節転移のステージングの変更に伴い,食道癌全国登録の予後情報を用いて,術前治療が標準となった時代における新たなステージング分類を策定した。 食道胃接合部癌の診断基準が決定し,7ページからなる小冊子が追加されていたが,今回の改訂では,日本胃癌学会と合同で食道胃接合部癌の定義および記載項目を策定した。また,食道胃接合部癌の領域リンパ節を策定し,病期診断に関する記載を追記した。委員による多くの議論が重ねられ本改訂が行われた。まだ議論すべき点も残っているが各委員の尽力に心より感謝したい。 改訂要旨:①食道の区分としてAeをなくし,食道胃接合部領域(Jz)を新たに規定した。②画像診断で隣接臓器浸潤の判定に難渋することがあるので,cT3を切除可能(cT3resectable:cT3r)と切除可能境界(cT3borderlineresectable:cT3br)に亜分類した。cT3r,cT3br,cT4の鑑別診断について,参考CT画像とその根拠となる参考所見を追記した。③cNの診断のため,各リンパ節の領域別にCTによるリンパ節サイズによる診断精度を参照して,推奨カットオフ値を示した。また,PETによる診断も参考資料として加えた。④リンパ節転移の程度(グレード)分類において,TNM分類との整合性を鑑み,領域リンパ節の転移個数による分類を採用した。これに伴い胸部食道癌では占居部位ごとのリンパ節群を廃止し,新たに胸部食道癌全体に対する領域リンパ節を設定した。この際,鎖骨上リンパ節は領域リンパ節ではなく遠隔リンパ節と分類した。ただし,切除による根治が期待されるのでM1aとして他の遠隔転移M1bと区別する。106pre,106tbR,112aoPは転移陽性例では郭清されることも多いが,十分なデータがないので今回は,遠隔転移M1bとした。⑤リンパ節郭清の程度(D)は術式により規定し,胸部食道癌ではD1:D2未満の郭清,D2:2領域郭清,D3:3領域郭清と定義した。ただし,106tbL,111,8a,11pは標準的2領域郭清範囲に含めるが省略してもよいとした。⑥進行食道癌に対する術前治療が標準化されたことに伴い,これまでは共通であった進行度分類を,臨床的進行度分類,組織学的進行度分類に分けてそれぞれ最新のデータに基づき設定した。⑦食道胃接合部癌に関して,日本胃癌学会と合同で,食道胃接合部癌の定義および記載項目を策定し,胃癌および食道癌全国登録での取り扱いを整理することで,今後さらなる実態調査を行第12版 序
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