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   iii 脳腫瘍取扱い規約は1995年に初版が作成されて以来,その時代の最新の知見を取り入れながら改訂を重ね,今版で第5版となる。引き続き日本脳神経外科学会と日本病理学会の連携で改訂作業が行われ発刊の運びとなった。前回2018年の第4版では,脳腫瘍WHO分類の2016年版の改訂に伴い遺伝子異常に基づく分子診断が取り入れられたことが大きな改訂点であった。その後2021年に脳腫瘍WHO分類の第5版が発刊され,遺伝子異常に基づく分子診断の傾向がさらに強まった大幅な内容変更が行われた。様々な腫瘍で分子診断が行われ,脳腫瘍の診断のためにはその知識が必須のものとなった。腫瘍型の数は整理され前版より少なくなったが,例えば神経膠腫では小児の腫瘍と成人の腫瘍が明確に分けられるなど,22の腫瘍型が新規に採用された。悪性度についても,これまで腫瘍横断的指標であったものが,腫瘍型ごとに設定されるようになり,同一悪性度であっても腫瘍によって予後が異なることを認めるようになった。そのため,悪性度表示もローマ数字からアラビア数字に変更されている。これらの変更に呼応するべく,脳腫瘍取扱い規約第5版では,脳腫瘍WHO分類の第5版に対応して改訂が進められた。 本取扱い規約が,第1部「脳腫瘍の分類および臨床画像診断」,第2部「脳腫瘍診断・病理カラーアトラス」,第3部「脳腫瘍の治療法」で構成されているのは前版までを踏襲している。今回,下垂体腫瘍は第4部「下垂体腫瘍」として外出しとなった。これは他臓器の神経内分泌腫瘍の分類に合わせ下垂体腺腫についてもWHO 2022 Endocrine Tumorsで詳細に記載されるようになり,下垂体神経内分泌腫瘍(Pituitary Neuroendocrine Tumor, PitNET)へ名称が変更されたことを反映している。 以上のように大幅な改訂を施した今回の脳腫瘍取扱い規約第5版が,脳腫瘍の診断と治療,そして研究に従事される皆さまの座右の書として役立つことを大いに期待している。 最後に本規約の作成にあたり,多大なご尽力をいただいた執筆者ならびに金原出版の皆さまに深く感謝申し上げる。 2023年10月 脳腫瘍取扱い規約改訂委員会齊藤 延人成田 善孝園田 順彦小森 隆司横尾 英明田中 伸哉柴原 純二第5版 序

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