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Wildtype脳腫瘍分類は発展途上であり,いまだに分類されていない極めて希少な未知の腫瘍型が存在することは明らかである。脳腫瘍の診断には,臨床情報,病理診断,分子診断を総合して行う必要があり,その意味においてWHO 2021で統合診断が正式に推奨されたことは,今後の方向性を示すうえで非常に意義が高いと考える。 本稿においては,まず分子診断に用いられる解析法について概要を示し,腫瘍各論についてはグリオーマ,上衣腫および胎児性腫瘍について日常の診療で比較的遭遇する腫瘍型に絞り,確定診断に必要もしくは診断上有用と考えられている分子遺伝学的所見について解説する。なお,WHO 2021ではWHOの慣習として英語表記に英米綴りが混在しているが(tumourとtumor,paediatricとpediaticなど),本規約内では米式の表記を用いることに留意されたい。 遺伝子の点突然変異解析を行う方法としてのゴールドスタンダードはサンガー法による直接シークエンスである(図2‒1)。これは標的の領域をPCRによって増幅し,dideoxy法によりサイクルシークエンスを行うもので,研究室レベルでは広く行われているうえ,外部委託による解析も比較的安価に行うことができる。ただし,本法には定量性はなく,感度もあまり高くないため,腫瘍細胞含有率の低い検体では変異の検出が困難なことがある11)。また多数のエクソンをもつ遺伝子などを調べるときは多くのプライマーセットが必要となり,作業量が増加し,煩雑である。b.パイロシークエンス パイロシークエンス法は,DNA合成時にアデニン(A)/シトシン(C)/グアニン(G)/チミン(T)それぞれのヌクレオチドを指定された順序で加え,それらが取り込まれる際に放出c.395G>A (R132H)図2‒1 Sanger sequencingにより検出されたIDH1変異IDH野生型ではGアリルのみを認める(左図)が,IDH変異では変異のあるアリル(A)と野生型のアリル(G)が重なってみられる(矢印,右図)。46  第2部 脳腫瘍診断・病理カラーアトラスB.解析法各論 WHO 2021においては原則として,診断に必要な分子所見を得るにあたり特定の検査法は推奨していない。したがって,検査対象となる分子所見に応じて,各施設の状況に則した検査法を選択することになる。その際には,検査法ごとの利点と限界を認識して用いる必要がある。以下に,主な分子異常の種類とその検査法について,概略を述べる。1.遺伝子変異解析a.サンガーシークエンス

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