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Ⅰ 下垂体腫瘍 下垂体腫瘍には,大きく下垂体前葉/腺性下垂体に由来する腫瘍と下垂体後葉/神経性下垂体に由来する腫瘍に分けられる。WHO分類では「2021年中枢神経系腫瘍分類」だけではなく,「2022年内分泌/神経内分泌腫瘍分類」(以下,WHO 2022)でより詳細に記載されている。 下垂体前葉から発生する腫瘍には,pituitary neuroendocrine tumor(PitNET)下垂体神経内分泌腫瘍と下垂体芽腫がある。下垂体後葉から発生する腫瘍には,下垂体細胞腫,トルコ鞍部顆粒細胞腫,紡錘形オンコサイトーマが挙げられるが,いずれも下垂体(後葉)細胞由来の腫瘍として一括して扱われている(pituicyte‒derived tumors,pituicyte tumor family)。このほかに神経細胞系腫瘍も後葉~視床下部腫瘍に分類されている。a.転写因子 PIT1:下垂体前葉ホルモン産生細胞のうち,成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL),甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生細胞の分化に関わる。 TPIT:副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞の分化に関わる。 SF1:性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)である卵胞刺激ホルモン(FSH),黄体化ホル250  第4部 下垂体腫瘍 1 病理検査のために1.標本の取り扱い 分子遺伝学的解析,標本の保存,取り扱いなどについては脳腫瘍診断・病理カラーアトラス(第2部Ⅱ脳腫瘍の分子診断およびⅢ脳腫瘍の病理診断)を参照。2.電子顕微鏡 下垂体腫瘍,特に神経内分泌腫瘍の分類には,電子顕微鏡を用いた検索が長く用いられてきたため,現在の診断にもその影が色濃く残る。免疫組織化学に基づいた分類法,定義に従い可能な範囲で診断を行うが,PitNETのうち多ホルモン産生腫瘍の亜型分類などでは,電顕所見は診断の補助として有用なことがある。3.迅速診断 機能性PitNETの鑑別診断や切除断端部の腫瘍細胞の残存の判定などのため,術中迅速診断への期待は大きい。凍結切片では,腫瘍と前葉の区別に索状構造の有無を指標とするが,細胞形態の判断には捺印細胞診の併用が有用である。標本は生理食塩水などに浸さないことがポイントで,凍結切片と同時に施行できるHE染色で十分診断できる。4.免疫組織化学 下垂体腫瘍の病理診断には,a.転写因子,b.産生ホルモン,c.サイトケラチンを主に用いる。

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