20466T
8/12

58 b. 陰圧状態で針先を腫瘤内ですばやく前後に動かし,あるいは回転を加えて,切り取り運動にて細胞を採取する。単に陰圧によって検体を注射針内に入れるだけではないことを理解しておくべきである。 c. 診断に必要な検体量は通常注射針内の量で十分である。吸引物が注射筒内に入ってきた d. 注射針の抜去は,ピストンを戻し,陰圧を解除してから行う。陰圧をかけたまま抜去すると注射針内の検体が注射筒内に移動し,乾燥変性するだけでなく,採取した細胞がプレパラートに塗抹できなくなる。 e. 注射筒から針を一度外し,注射筒内に空気を入れた後,再び注射針を装着し,注射針内の f.充実部を有する囊胞性病変では充実部を穿刺する。 g. 無吸引穿刺法:注射針を指で直接持ち穿刺する方法で,細胞密度が高い病変の場合には 穿刺吸引細胞診fine needle aspiration cytology(FNAC)は,1)手技が簡単で,2)患者への苦痛が少なく,3)繰り返し実施でき,4)質的診断精度が針生検とほぼ同じであることから,最も一般的に行われている甲状腺病変の形態学的診断法である。また,術中迅速診断時に作製される凍結組織標本ではしばしばアーチファクトにより核内に封入体様構造物が出現し診断に支障をきたすことから,捺印塗抹標本による細胞診の併用が有用である。 以下に穿刺吸引細胞診のインフォームド・コンセント,標本採取,標本作製法,報告様式,細胞所見を記す。 穿刺吸引を行う前に,患者に次に記す穿刺吸引細胞診の説明を行い,患者の同意を得,恐怖心を最小限にし,検査時における最大限の協力を求めることが必要である。 a.患者が有している病変の説明を行う。 b.病変を診断するいくつかの方法とそれぞれの利点,欠点,合併症などを説明する。 c.穿刺吸引細胞診の手技を説明し,患者の協力を求める。 d.診断は細胞検査士や細胞診専門医・病理専門医によって行われることを説明する。 e. 採取した検体は診断の目的以外には使用しないことを約束する。あるいは,目的外使用の承諾を得る。 標本採取に必要な器具や,標本の処理方法の主要な注意点と手順を簡単に列挙する。 a. 安全で,診断に適した部位から細胞を採取するために,必ず超音波ガイド下で針先が目的部位に達していることを確認する。場合には直ちに穿刺吸引操作を中止する。ただし,液状検体の場合は続行する。検体をプレパラート上に吹き出す。 1 .インフォームド・コンセント 2 .標本採取 E .細胞診

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る