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3章Q & A42Q1なぜ胃がんになるのですか?A①総論 胃がんの原因としては遺い伝でん的てき因いん子し(遺伝による原因)と環かん境きょう的てき因いん子し(環境による原因)があります。遺伝的因子として,極めて稀ですが,家か族ぞく性せい胃いがんが知られています。細胞と細胞の接着に関わるタンパク質の遺伝子であるCDH1やαカテニンに変異があると,びまん浸潤型の胃がんを高い確率で発症します。他にも,BRCA1遺伝子の異常により発症する遺い伝でん子し乳にゅうがん卵らん巣そうがん症しょう候こう群ぐん(HエイチボックBOC,高い確率で乳がんや卵巣がんを発症します)や,APCという遺伝子異常により発症する家か族ぞく性せい大だい腸ちょう腺せん腫しゅ症しょう,ミスマッチ修復酵素の遺伝子異常が原因となるリンチ症しょう候こう群ぐんなどで,胃がんのリスクが増加することが知られていますが,胃がんの発生との間に明確な関連は未だ解明されていません。 日本における胃がんの発生には遺伝的因子よりも環境的因子がより重要と考えられています。家族内で高頻度に胃がんが発症することがありますが,幼少期から同じ環境で生活し,食品の嗜好が似通ってしまうことが原因となるものと思われます。 環境による因子としてはピロリ菌きんの感染が最もよく知られています。幼少期のピロリ菌感染によってゆっくりと胃粘膜に炎症が引き起こされ(慢まん性せい萎い縮しゅく性せい胃い炎えん),そこに塩分を過量に摂取すると胃がんが発生しやすくなります(Q & A総論4:44ページ参照)。一方で,野菜や果物はほぼ確実に胃がんのリスクを軽減するとされています。緑茶の摂取も胃がんの発生を抑制させる可能性があることが報告されています。喫きつ煙えんは胃がんを含めて10種類のがんとの因果関係が証明されています。飲いん酒しゅによって噴ふん門もん部ぶがんが増えることも指摘されています。ピロリ菌以外の微生物としては,日本では成人の約90%が感染しているエプスタイン・バー(EB)ウイルスによっても胃がんが発生することが知られていますが,発

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