3. 認知障害を有する患者に対する統合的なリハビリテーションを推奨する。 Grade Ⅱ・Ⅲ神経膠腫に対する診療の目的として,生存期間の延長のみならず,神経症状を改善しQOLを保つこと,しかもこれらを長期的にコントロールすることが重視されている。 神経症状の原因には,腫瘍そのものと,治療の有害事象によるものがある。そして,これらに影響する因子は腫瘍の種類,局在,合併症など多岐にわたる。てんかん発作はGrade Ⅱ・Ⅲ神経膠腫の75%で発生すると報告されているが1),他の症状,高次機能障害,全身倦怠感などの出現頻度は明らかではない。 治療によるてんかん発作の頻度減少と消失の評価は,Engelのてんかん外科手術後の転機評価に準じて行われることもある2)。認知機能,精神心理学的障害,易疲労性などの客観的な評価方法と治療効果判定法については,実臨床に有用・簡便かつ安定した評価方法が確立されていないため,治療効果の解釈が困難な点がある。QOLの評価法として各種腫瘍の臨床試験でもっとも広く用いられているのは,EORC quality of life questionnaire C30(EORTC QLQ‒C30)で,これは30項目の全般的評価からなり,(a)5つの機能スケール,(b)3つの症状スケール,(c)6つの個別項目が含まれている。さらに脳腫瘍患者のための補足としてBN20が用いられ,(d)4つの基盤スケール(視力障害,運動障害,コミュニケーション障害,将来不安),(e)7つの症状項目(てんかん,膀胱直腸障害,下肢脱力,頭痛,傾眠,髪の脱失,瘙痒感)が設定されている3)。QOLの評価は病気の時相,心理学的状態,年齢や社会経済学的状況などからも影響を受ける4)。今後,脳腫瘍患者でどのような評価がもっとも良いのかを議論する必要があり,介入によってどの症状や項目がどの時点で改善されるかを明らかにしていく必要がある。したがって,現時点では高レベルの 推 奨1. てんかんの既往を有する患者には,抗てんかん薬投与を推奨する。 〔推奨度1A〕2. てんかん発作の既往がない患者には,周術期など臨床上有益と判断される場合を除き,〔推奨度1B〕予防的な抗てんかん薬を投与しないことを推奨する。 る。 236 成人Grade Ⅱ・Ⅲ神経膠腫課題4:臨床症状への対応CQ 6神経症状(てんかん,高次機能障害など)への対応はどうするか?解 説〔推奨度1B〕4. 腫瘍に関連した神経心理的症状に対する治療には神経心理専門医との協議を提案す〔推奨度2C〕
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