1.てんかん てんかんはGrade Ⅱ・Ⅲ神経膠腫の初発症状として,あるいは経過中においても起こりうる。発作型は単純部分発作(意識保持焦点発作)・複雑部分発作(意識減損焦点発作),全般性強直間代発作,または部分発作の二次性全般化発作(焦点起始両側強直間代発作)のいずれもみられる。薬剤抵抗性てんかんは,心理社会的ハンディキャップの原因となることが多く,てんかん発作のコントロールは神経学的機能,QOLの改善をもたらす1)。 神経膠腫患者のてんかん発症メカニズムには,多くの因子が複合的に関与していると考えられ,完全には解明されていない1)。てんかん発作と神経膠腫の増大は病態メカニズムに共通点が多い。神経細胞のシナプス前小胞体から放出されるグルタミン酸が細胞外に過剰に存在することが,発作性脱分極電位の生成のみならず,興奮毒性神経細胞死にも関与し,同時にグルタミン酸受容体の活性化は腫瘍の増大を促進すると考えられている。一方,GABA受容体は神経興奮を抑制すると同時に,腫瘍増大も抑制すると考えられている。 てんかんの治療は,腫瘍によるてんかん発作の既往を有する患者に対する治療と,てんかん発作の既往がない患者に対する発作発現の予防とに分けて考える。1)発作の既往を有する患者に対する治療 抗てんかん薬および腫瘍自体に対する治療(放射線治療,外科的摘出術,テモゾロミド)の効果について研究されている。 抗てんかん薬は新規薬剤の上市により,選択肢が多くなった。レベチラセタムとプレガバリン各単剤投与のランダム化比較試験の結果,1年後にそれぞれ65%と75%の患者のてんかん発作が消失した2)。他に,手術後24時間以内にフェニトインからレベチラセタムに変更する群と,フェニトイン続行群とのランダム化比較試験が行われた。この試験は登録が少なく中止されたが,前者は87%,後者は75%でてんかん発作が消失した。フェニトインに毒性が高かった3)。レベチラセタムは部分発作,部分発作の二次性全般化,強直間代発作(併用)に効能効果が認められており,肝臓の酵素誘導がなく他の薬剤との相互作用成人Grade Ⅱ・Ⅲ神経膠腫エビデンスは乏しく今後の臨床試験に期待しなければならないが,臨床的にQOLに対して直接的影響が大きいてんかん発作の制御と,認知障害・精神心理学的異常の改善について推奨と解説を作成した。CQ 6 237 ❖文 献 1) van Breemen MS, Wilms EB, Vecht CJ. Epilepsy in patients with brain tumours:epidemiology, mechanisms, and management. Lancet Neurol. 2007;6(5):421—30.[PMID:17434097] 2) Engel J Jr, Wiebe S, French J, et al. Practice parameter:temporal lobe and localized neocortical resections for epilepsy:report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology, in association with the American Epilepsy Society and the American Association of Neu-rological Surgeons. Neurology. 2003;60(4):538—47.[PMID:12601090] 3) Chow R, Lao N, Popovic M, et al. Comparison of the EORTC QLQ-BN20 and the FACT-Br quality of life questionnaires for patients with primary brain cancers:a literature review. Support Care Can-cer. 2014;22(9):2593—8.[PMID:25015058] 4) Giovagnoli AR, Meneses RF, Silvani A, et al. Quality of life and brain tumors:what beyond the clini-cal burden? J Neurol 2014;261(5):894—904.[PMID:24590402]4
元のページ ../index.html#11