PCNSLではしばしば(約10~20%)眼内リンパ腫を認めるため,眼科的検査が必要である。眼内リンパ腫単独症例は,脳や脳脊髄液への浸潤をきたすハイリスク群であり,未治療の場合,脳内への再発の根源となりやすい。したがって,PCNSL患者に対しては眼科的精査(スリットランプ検査含め)が必須であり,International PCNSL Collaborative Groupによるステージング精査1)(レベルⅤ),National Eye Instituteの診断指針にも含められている2)(レベルⅤ)。 また,全身性悪性リンパ腫の精査は,もし検出された場合に中枢神経系リンパ腫が転移性腫瘍である可能性が生じる点,中枢神経系以外の病巣を標的とする治療レジメンの検討が必要となってくる点など,治療上極めて重要である。全身精査の方法として,PET検査の有用性も報告されている。Memorial Sloan‒Kettering Cancer Center(MSKCC)における小規模の後方視的研究で,166例のPCNSL疑い症例のうち,49例で全身FDG‒PET検査が施行された。このうちの11%の症例で全身FDG-PET検査により全身性悪性リンパ腫が検出され,8%の症例では全身FDG‒PET検査が唯一の全身病変を示す検査であった3)(レベルⅣ)。この結果は,全身PET検査がCTで検出できない病巣を捉えることのできる可能性を示唆するもので,PCNSLのステージングにおける有用性を示している。 なお,HIV陽性の免疫不全症例では,PCNSLを発症するリスクが高いことが知られており,感染の有無をスクリーニングすることが必須である。推 奨中枢神経系リンパ腫では,眼内リンパ腫や全身性悪性リンパ腫を合併することがあり,その有無を精査することを推奨する。 〔推奨度1A〕138 中枢神経系原発悪性リンパ腫 ❖文 献 1) Abrey LE, Batchelor TT, Ferreri AJ, et al. Report of an international workshop to standardize base-line evaluation and response criteria for primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2005;23(22):5034—43.[PMID:15955902](レベルⅤ) 2) Nussenblatt RB, Chan CC, Wilson WH, et al. International Central Nervous System and Ocular Lym-phoma Workshop:recommendations for the future. Ocul Immunol Inflamm. 2006;14(3):139—44.[PMID:16827214](レベルⅤ) 3) Mohile NA, Deangelis LM, Abrey LE. The utility of body FDG PET in staging primary central ner-vous system lymphoma. Neuro Oncol. 2008;10(2):223—8.[PMID:18287338](レベルⅣ)ステージング:眼科検査,全身検査CQ 3脳リンパ腫に対して眼科的検査,全身精査は必要か?解 説
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