20469T
10/13

6 ミスマッチ修復機能欠損を判定するための検査 dMMR大腸がんは,DNA複製エラーに伴い高度変異性(hyper—mutated type)を生じ,免疫原性の高いバリアントがオネアンチゲンとして細胞表面に提示される確率が高まるとともに,Tリンパ球の賦活化を認める。その結果,腫瘍や微小環境に対する浸潤性CD8+T細胞の有意な増加を認め,dMMR大腸がんがMSSおよびpMMR大腸がんと比較し予後良好な一因と考えられる2,3。一方でdMMR大腸がんは,腫瘍細胞のPD—L1発現を上昇させ,腫瘍免疫を回避することが報告されている4。このように,dMMR大腸がんはミスマッチ修復機構の破綻による高免疫原性により,腫瘍細胞が認識されやすくなっているにも関わらずPD—L1発現により免疫反応が抑えられていることから,免疫チェックポイント阻害薬によるPD—1/PD—L1経路のブロックが有効と考えられる。6.2基本的要件切除不能進行再発大腸がん患者に対し,免疫チェックポイント阻害薬の適応判定を目的として,一次治療開始前にミスマッチ修復機能欠損を判定する検査を実施する。推奨度強く推奨する[SR 9名]39MMR機能欠損大腸がんにおける腫瘍微小環境の免疫学的機構切除不能進行再発大腸がんにおけるMMR機能欠損を判定する検査の臨床的意義(表1) 抗PD—1抗体薬ペムブロリズマブは,既治療の切除不能進行再発大腸がんを対象とした第Ⅱ相試験(KEYNOTE—016試験)において,MSSでは奏効例を認めなかったのに対し,MSI—Hでは40%の奏効割合を認めた5。また,既治療の切除不能進行再発MSI—H/dMMR大腸がんを対象としたペムブロリズマブの第Ⅱ相試験(KEYNOTE—164試験)のうち,三次治療以降を対象としたコホートAでは,登録された61例において奏効割合27.9%(95%CI 17.1—40.8%),12カ月無増悪生存率34.3%,12カ月全生存率71.7%を示し,日本人集団におけるサブグループ解析においても同様の傾向であった6—8。これらの結果から,本邦では2018年12月にMSI検査キット(FALCO)をコンパニオン診断薬として,大腸がんを含むMSI—H固形がんに対するペムブロリズマブが薬事承認された。 その後,未治療切除不能進行・再発大腸がんを対象とした標準治療とペムブロリズマブ単剤療法の有効性を検証した第Ⅲ相試験であるKEYNOTE—177試験が行われ,主要評価項目である無増悪生存期間の中央値はペムブロリズマブ群で16.5カ月,標準治療群8.2カ月と有意差をもってペムブロリズマブ群の無増悪生存期間延長が示された。奏効割合はペムブロリズマブ群43.8%,標準治療群33.1%とペムブロリズマブ群で高かった9。全生存期間中央値は,ペムブロリズマブ単剤群が未到達,標準化学療法群が36.7カ月だった(HR 0.74,p=0.036)10。本試験の結果よりペムブロリズマブは切除不能進行・再発dMMR大腸がんの一次治療として2020年6月に米国食品医薬品局(FDA)で承認され,本邦においても2021年8月25日に「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI—High)を有する結腸・直腸癌」に対して適用拡大された9,10。「大腸癌治療ガイドライン医師用2022

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る