11.1 大腸がんに限らず腫瘍の増殖,進展においては腫瘍血管の新生が必要であり,血管新生には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)や血小板由来増殖因子(platelet—derived growth factor:PDGF),線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF),アンジオポエチンなどさまざまな因子が関与している。VEGFは二量体を形成する糖蛋白であり,血管内皮細胞上に発現する膜貫通型レセプター(VEGF receptor:VEGFR)に結合することで,シグナル伝達経路が活性化される。VEGFにはVEGF—A,B,C,D,E,胎盤増殖因子(placental growth factor:PlGF)—1,2の7つが,VEGFRにはVEGFR—1,2,3の3つが同定されている。なかでもVEGF—AのVEGFR—2に対する結合がシグナル伝達経路の中心と考えられている。血管新生阻害薬として,VEGF—Aに対するヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブや,VEGF—A,C,DとVEGFR—2の結合を阻害する抗VEGFR—2完全ヒト化モノクローナル抗体ラムシルマブ,VEGFR1,2ドメインとIgG1抗体のFcドメインを融合させVEGF—A,BおよびPlGFを血中でトラップする遺伝子組み換え蛋白アフリベルセプトが開発され,殺細胞性抗がん薬との併用効果が報告されてきた。特にラムシルマブやアフリベルセプトの併用効果が証明された二次治療において,治療選択の補助となる検査の開発が重要となっている。 切除不能進行再発大腸がん患者の二次治療としてFOLFIRI+ラムシルマブの有効性を検証したRAISE試験ではバイオマーカー解析が事前に設定されており,試験に登録された1,050例を探索コホートと検証コホートに1:2の割合で割り付け,治療前血漿中のVEGF—C,D,sVEGFR—1,2,3,および腫瘍組織のVEGFR—2蛋白発現と治療効果について検討された1。結果,VEGF—D値は,探索コホートにおいて全生存期間,無増悪生存期間におけるラムシルマブ併用効果と強い相関を認め,検証コホートにおいても同様に有意な交互作用を認めた(全生存期間:p=0.01,無増悪生存期間:p=0.001)。全対象(探索+検証コホート)における解析でも,VEGF—D高値/低値とラムシルマブの治療効果には有意な交互作用を認め(全生存期間:p=0.0005,無増悪生存期間:p<0.0001),VEGF—D高値群(n=536)では全生存期間,無増悪生存期間ともにラムシルマブ併用群で有意に良好である一方,VEGF—D低値群(n=348)ではラムシルマブの有効性は示せず全生存期間では有意に不良であった(表1)。また本研究で行われた測定方法がRUOレベルであったことから,臨床に即したIUOレ78血管新生因子を指標としたアッセイ開発の経緯ラムシルマブ治療における血漿中VEGF—D値の意義血管新生因子を指標としたアッセイ11現在開発中の検査
元のページ ../index.html#11