過剰診断を含む早期乳がんを数多く診断ますます患者が集まり、診断技術が上がる名医の評判が「治る乳がん」をあの先生に命を救われた上がる多く治療すごく早期に見つけてもらった乳がんが「治った」過剰診断は乳がん検診の最も重大な不利益です。さらに厄介なことに診断された時点では過剰診断なのかどうかは判断できません。PSA検診で診断された前立腺がんの場合、条件が合えば治療を行わず経過をみる方法(監視療法)もありますが、乳がんの場合は原則治療が必要となります。したがって、臨床医はできる限りこの過剰診断を少なくしたいと思っているのですが、皮肉なことに名医であればあるほど過剰診断が増えてしまいます。“名医”は最高の技術を駆使して“普通の医師”が診断できないような、より小さな、より早期の乳がんを多く診断します。必然的にその中には多くの過剰診断が含まれることになります。過剰診断はもともと治療しなくても影響がないがんなので、治療をすれば100%治ります。患者さんは、あの先生が早期に発見してくれたおかげで大切な命が救われたと、とてもとても感謝します。友人や近所の人たちに心配だったらあの先生にみてもらったほうがいいよと話すので、“名医”の元にはますます患者が集まります。多くの検査をすることにより“名医”の腕も上がり、さらに多くの早期乳がんが診断されます。“名医”の評判はますます上がり、過剰診断も増えてしまいます。検診の目的はより早期のより小さながんを見つけることではなく、乳がんで亡くなる人を減らすことにあるということをいつも考えておきたいです。102コラム:名医・過剰診断スパイラル
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