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G各薬剤によるCIPNの症状 CIPNの原因薬剤として,白金製剤・タキサン系製剤・ビンカアルカロイド系製剤,ボルテゾミブやサリドマイドが知られているが,近年,多くのがん種で使用されている免疫チェックポイント阻害薬でも発症する。薬剤により末梢神経障害が起こるメカニズムが違うため,症状にも特徴がある1)。白金製剤以外の殺細胞性抗がん薬の多くは,微小管阻害作用による軸索輸送障害であり,四肢末梢から始まるglove and stocking型の感覚障害の分布を示すことが多い。感覚障害に加えて,筋力低下などの運動障害も起こり得る。神経症状は治療開始後すぐから出現し,薬剤の中止により徐々に回復するが不可逆的な障害を残すこともある2)。 アキレス腱反射の低下を伴う下肢優位の振動覚の低下が出現し,運動障害は少ない3)。聴神経障害により高音域の感音性難聴も起こる。蓄積性があり,投与中止後も長期間症状が継続することが多い4)5)。 投与直後から起こる急性障害と慢性障害がある。急性障害は寒冷刺激により増悪する四肢末端や口唇周囲の知覚異常を特徴とし,一過性の嚥下困難や呼吸困難が出現することもある。急性障害は数日以内でほとんど消失するが,慢性障害は数カ月から数年継続することもある6)。投与量が800 mg/m2を超えると,感覚性の機能障害を伴う神経障害の頻度が高くなる。 通常量の使用では神経症状の出現は比較的少ない。高用量でシスプラチンと同様の症状が出現することもある7)。 混合性多発神経障害で,四肢の知覚異常を主体とし,1回投与量と総投与量に相関する8)。20第2章 総論1.白金製剤 脊髄後根神経節(dorsal root ganglion;DRG)における神経細胞の細胞死によって発生し,二次的に軸索と髄鞘が障害を受け感覚障害を呈する。軸索にはタンパク質を作るリボソームがないため,神経細胞体から軸索を通じてタンパク質を輸送する必要がある。そのため神経細胞体が消失すれば,軸索と髄鞘が再生することはなく,薬剤中止後も回復は困難なことが多い。軸索の短い神経細胞体も障害されることから,感覚障害は四肢末梢とともに体幹や顔面にも発生する2)。2.タキサン系製剤1)シスプラチン2)オキサリプラチン3)カルボプラチン1)パクリタキセル

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