第2章HCIPNの評価総論23 静的触覚閾値の評価として,Semmes— Weinstein Monofilamentsがあり,閉眼下で太さの異なるフィラメントで刺激して,感じることのできた最小の刺激を評価し,触覚正常から防御知覚脱失までを評価する4)。より簡便な方法として10 gを感知可能か評価する方法もある4)5)。H.CIPNの評価1.CIPN評価の概要 CIPNの評価は,定量的評価(機能評価・電気生理学検査)と質問紙評価(医療者評価・患者報告)に大別される。CIPNの主な病態である痛み・しびれ感は,細かいものをつまめない・手に持ったものを保持できず落としてしまうといった手指機能の障害,ふらつく・つまずくといった歩行機能の障害を引き起こす。さらに機能障害により,移動・食事・入浴などの日常生活活動(activities of daily living;ADL),家事や買い物などの手段的日常生活活動(in- strumental activities of daily living;IADL)の障害が生じる。質問紙評価においては,痛みやうずきなどの自覚症状のほか,ADLやIADLの障害の程度も評価する場合が多いが,ADLやIADLに困難を感じるかどうかは,実際にその活動を日々行うかに依存し,就労職種や家事従事の程度など患者の生活様式にも大きく影響を受ける。そのため「CIPNが軽度であればADL・IADLの障害も軽度である」とは断定できない点に注意が必要である。50論文41評価尺度を比較したシステマティックレビューにおいては,CTCAEなど標準有害事象規準,患者報告アウトカム,疼痛尺度,定量的指標と自覚症状指標を含む複合総合評価指標といった尺度が検討されたが,特に神経障害性疼痛についてCIPNに特化しない尺度やほかのがん疼痛尺度と重複しているものが多く,依然として正確な神経障害の病態把握や臨床的に問題視すべき症状閾値については評価できる尺度は開発されていないことが指摘されている1)。 CIPNの評価は症状の把握や代償的なアプローチを考えるうえで重要ではあるが,CIPNの臨床評価方法は確立していない。2,373論文に使用された117のCIPN評価をデルファイ評価したシステマティックレビュー論文においては,Patients Neurotoxicity Questionnaire(PNQ)が最も高く評価されたが,70%以上の医療者のコンセンサスを得られるCIPN評価尺度はなかった2)。CIPNの評価においてはPROの重要性が指摘されており,臨床試験における使用も増加傾向にあるが,機能評価を含む客観評価もCIPNの全容とその対処方法を把握するためには必要であり,妥当な評価方法に関しては今後も検討の余地がある段階である3)。2.定量的評価 CIPNの症状は多様であり,定量的評価によりその性質を評価する。いずれもCIPNの確定診断のカットオフ値は設けられていないが,どの部位のどの感覚がどの程度障害されているか評価することで,代償的なアプローチを考察する手がかりとなる。1)感覚機能評価
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