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 また,障害を受けた受容器と神経線維の単位の評価として,ディスクリミネーターを用いた二点識別覚評価があり,間隔の異なる2本のピンが2本の刺激として感知できるかで分布密度を評価する。狭い間隔を感知できるほど,指先の器用さが保持されている。また高齢者では転倒者において間隔が広くなることが報告されている6)。 振動覚はtuning fork(音叉)で評価する。128 Hzの音叉の揺れが感知できなくなったところで「はい」と答えることで,どの程度の振動覚を感知できているか評価し,感覚性の運動障害の検知にも役立つ。10秒感知ができなかった場合,神経障害を疑う7)。 移動能力の評価としてTimed Up and Goや6分間歩行テストがある。いずれも患者が実際に立ち座りや歩行を行う評価であり,CIPNが歩行機能に及ぼす影響を評価でき,転倒リスクの検出に役立つ。また手指機能についてGrooved Pegboard TestやSimple Test for Evaluating Hand Functionを用いることで,CIPNが手の不器用さに及ぼす影響や疼痛誘発動作が評価できる。3)電気生理学検査 電気生理学検査はCIPNの検査としてのカットオフ値は確立していないが,CIPNにより神経伝導検査における感覚振幅が特異的に下がることが報告されている5)8)。また,電流知覚閾値(current perception threshold;CPT)についてCPT 2000 HzがCIPNの症状との相関を示している9)。24第2章 総論3.医療者による評価 米国National Cancer Institute(NCI)のCancer Therapy Evaluation Programが公表したスケールである有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events;CTCAE)が広く用いられている。2022年11月現在の最新版はver5.0でありGrade 1が症状なし,Grade 2がIADL障害,Grade 3がADL障害である。簡便に評価できる一方で,その境界の判断が難しく,また評価者(医療者)の裁量が反映されやすく患者の自覚症状との乖離が指摘されている10)。 そのほか,客観的所見の有無と機能障害の程度を判定基準としたEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)scores11)や,オキサリプラチン起因性末梢神経障害の評価に特化し7日以上の症状持続の有無を判定基準としたDebiopharm社の神経症状—感覚性毒性基準(DEB—NTC)がある12)。4.患者報告による評価 CIPNに関する患者報告アウトカム(patient—reported outcome;PRO)のうち,最も使用されている評価尺度はEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire—CIPN twenty—item scale(QLQ—CIPN20)とFunctional Assessment of Cancer Therapy/Gynecologic Oncology Group—Neurotoxicity(FACT—Ntx)であり,いずれも信頼性・妥当性が検証済みでNCIの専門家会議において臨床試験に使用することが推奨さ2)運動機能評価

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