第2章総論25れている3)。 QLQ—CIPN20はEORTC—QLQ—C30の追加モジュールであり,20項目4件法で過去7日間の感覚,運動,自律神経を評価する。ただし自律神経機能は他ドメインとの相関が少なく独立した頻度を示すため,16項目版や15項目版が開発されている13)14)。 FACT—Ntxは38項目の5件法尺度であり,過去7日間の身体・社会(家族)・感情・機能の健康と神経毒性について評価する。12項目または4項目の簡易版も発行されている。類似する尺度にタキサン系抗がん薬の副作用症状評価に特化したFACT—Taxaneがある15)。 また,より簡便な尺度として,感覚・運動障害を5件法で評価したうえでその生活障害についての詳細を評価するPatient Neurotoxicity Questionnaire(PNQ)16)~18)や,CTCAEの患者報告版であるPRO—CTCAEがある19)。いずれも知覚鈍麻・異常感覚・疼痛といった症状の詳細な質についての評価には向かないが,日常生活への影響度により症状を自己評価できる尺度である。 CIPNに特化しない痛みの尺度として,10 cmの線上に重症度を記載するVisual Analogue Scale,24時間以内の痛みを10段階評価するPain Intensity Numerical Rating Scale,痛みの頻度,強度,場所,質を問うBrief Pain Inventoryがある20)。Brief Pain Inventoryに関しては短縮版の使用が臨床上推奨されており,最も強い痛み・最も弱い痛み・平均・最近・姿勢ごとの痛みについて10段階で自己評価する21)。 箸を使うなどの日本の生活背景を考慮したうえで,CIPNの多様な症状を評価し効果的なマネジメントを検討するための尺度として,本邦で「がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害の包括的評価尺度(CAS—CIPN)」が開発され,信頼性・妥当性が検証されている22)。CAS—CIPNは,負の感情を伴う生活支障への脅威,手の巧緻動作障害,治療選択/マネジメントの自信,手掌・足底の感覚異常の4つの下位尺度から構成される,15項目・4件法の質問紙であり,FACT—Ntxと強い相関が認められている。質問紙はWeb申請により使用することが可能である。H.CIPNの評価(華井 明子)5.複合評価指標 Total Neuropathy Score(TNS)は定量的指標と自覚症状指標を含む複合総合評価指標であり,自覚症状評価と膝蓋腱反射や握力測定などの定量的評価が含まれる。その内容により,modified TNSやTNS—clinicalなどいくつかのバージョンがあるが,いずれもCTCAEとの相関が認められている7)23)。6.結語 CIPNの評価は,痛みの評価から神経学的評価まで多岐にわたるが,最も臨床上有用性の高い評価は患者報告である24)。症状によってはCIPNか判断しがたいものもあるが,問診を通じてADL・QOLへの影響を評価し,心理影響や代償的アプローチも視野に入れて対処を考えることが望ましい。
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