20475T
7/14

16 各論 Ⅰ.遺伝性大腸癌の概要●遺伝性大腸癌は大腸癌の発症リスクが高く原因遺伝子が同定されている疾患群を指し,原因遺伝子によって遺伝形式,大腸ポリープの密度,組織型,大腸癌発症リスク,関連する大腸外病変が異なる。代表的な遺伝性大腸癌の分子遺伝学的および臨床病理学的特徴を表Ⅰ—1にまとめた。●遺伝性大腸癌は,ポリポーシスの有無により大別できる。さらに,ポリポーシスを示す遺伝性大腸癌は,ポリープの組織型により,腺腫性ポリポーシス,過誤腫性ポリポーシス,鋸歯状ポリポーシスに分類できる。●腺腫性ポリポーシスは大腸ポリープ数が10個以上の腺腫性ポリープを認める患者を指す。大腸ポリープの数により密生型(1,000~2,000個以上),非密生型(100個以上1,000個未満),attenuated型(10個以上100個未満)に分類することがあるが,観察した年齢,使用した光学機器,色素散布や狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)を含めた観察方法,担当医により大腸ポリープ数の結果は異なることに注意が必要である。腺腫性ポリポーシスの中でも,数千個以上の腺腫性ポリープを認める場合は家族性大腸腺腫症(FAP)であることが多く,胃や十二指腸にもポリープが多発する。100個未満の場合は,FAP,MUTYH関連ポリポーシス(MUTYH—associated polyposis:MAP),ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(polymerase proofreading—associated polyposis:PPAP),先天性ミスマッチ修復欠損(constitutional mismatch repair deficiency:CMMRD)症候群,MSH3関連ポリポーシス(MSH3—associated polyposis),MLH3関連ポリポーシス(MLH3—associated polyposis),NTHL1関連ポリポーシス(NTHL1—associated polypo-sis)などが鑑別疾患として挙がるが,これらの腺腫性ポリポーシスでも大腸ポリープ数が100個を超えることがあるため,大腸ポリープ数のみで腺腫性ポリポーシスを鑑別することはできない。遺伝形式別では,APC,POLE,POLD1,AXIN2を原因遺伝子とする場合は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式を,その他の腺腫性ポリポーシスは常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとる。●過誤腫性ポリポーシス症候群は大腸のポリープ数が10個未満のことがある。代表的な過誤腫性ポリポーシスには,Peutz—Jeghers症候群(Peutz—Jeghers syndrome:PJS),若年性ポリポーシス症候群(Juvenile polyposis syndrome:JPS),Cowden症候群(Cowden syndrome:CS)/PTEN過誤腫症候群(PTEN hamartoma tumor syndrome:PHTS)があり,各疾患に特徴的な組織型を示す。過誤腫性ポリポーシスでは,大腸に加えて胃や小腸(十二指腸を含む)にもポリープが多発する傾向があり,口唇の色素斑や巨頭症など特徴的な外見を示すことがある1—6)。Ⅰ‒1‒1 定義Ⅰ‒1‒2 分類Ⅰ‒1 基本的事項

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る