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サイドメモⅡ—1サイドメモⅡ—240 各論 Ⅱ.家族性大腸腺腫症●FAPの患者は大腸癌の罹患リスクが高いため,大腸癌に対する適切な治療介入が重要である。また,大腸外にも腫瘍性および非腫瘍性病変が好発するため,随伴病変を考慮したサーベイランスや治療が必要となる。●なお,FAPの診断は遺伝学的検査によってのみ実施されるが,2024年1月現在,本邦では大腸腺腫性ポリポーシスに対する遺伝学的検査は保険適用外である。したがって,本邦では臨床的にFAPが疑われても遺伝学的検査未実施の症例が多い。しかし,100個以上の腺腫性ポリポーシスを認める症例では,8割以上にAPC遺伝子に生殖細胞系列の病的バリアントを認めることから,古典的FAPに矛盾しない表現型を認める症例は,臨床上はFAPに準じてサーベイランスおよび治療,血縁者への対応を行う。■家族性大腸腺腫症の呼称 本ガイドラインではfamilial adenomatous polyposisの日本語訳として「家族性大腸腺腫症」の呼称を用いてきたが,同疾患を「家族性腺腫性ポリポーシス」,「家族性大腸ポリポーシス(症候群)」と呼称することもある。■APC関連ポリポーシス(APC—associated polyposis(conditions)) 近年,大腸腺腫性ポリポーシスを引き起こす複数の原因遺伝子とその遺伝形式,関連腫瘍を含む随伴病変が明らかとなり,原因遺伝子ごとにサーベイランスや治療,血縁者への対応が提案されている(CQ1)。それに伴い,原因遺伝子にちなんだ疾患名の命名が増えつつあり,FAPとgastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)(Ⅱ—2—2:鑑別を要する疾患・病態[p. 45])を併せてAPC関連ポリポーシス(APC—associated polyposis(con-ditions))との総称を用いられることがある1,2)。また,FAPを含む腺腫性ポリポーシスを生じる疾患を腺腫性ポリポーシス症候群(adenomatous polyposis syndrome)と総称することがある1)。●FAPは大腸癌(CRC)素因症候群であり,古典型とattenuated型がある。Ⅱ‒1 概要●家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis:FAP)は大腸腺腫性ポリポーシスを主徴とする第5番染色体上のAPC遺伝子(5q22.2)の生殖細胞系列病的バリアントを原因とする常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患である(サイドメモⅡ—1:家族性大腸腺腫症の呼称,サイドメモⅡ—2:APC関連ポリポーシス)。Ⅱ‒1‒1 臨床的特徴

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