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診断・治療 CQ1479Ⅲ検証するために,それぞれ2週間の介入を行い,その間,多層包帯法も行うpilot randomized studyを行った8)。その結果,体積変化率はMLDで22%,SLDで11.8%であったが,両群間に有意差はなかった。 Williamsらは上肢リンパ浮腫に対するMLDとSLDの治療効果について報告している9)。乳癌関連リンパ浮腫患者31人に対し,3週間毎日MLD治療を行い,無治療期間6週間を経て,3週間毎日SLD治療を行う群と,3週間毎日SLD治療を行い,無治療期間6週間を経て,3週間毎日MLD治療を行う群にランダムに分け,リンパ浮腫の改善率を検証した。結果として,両群の統計的有意差はみられなかったが,ともに介入前に比べて有意にリンパ浮腫の改善はみられた。 Bahtiyarcaらは,乳癌関連リンパ浮腫に対する複合的治療の初期治療時に,多層包帯法にMLDではなくSLDを加えることで,上肢浮腫,QOL,上肢機能,不安やうつにどのような影響を与えるかを検証している10)。多層包帯法群14人と多層包帯法+SLD群10人で調査した。多層包帯法は23時間,週5回施行され,SLDは多層包帯を巻く前に施行された。6カ月後,両群とも治療により有意に浮腫が軽減したが,2群間でその効果に有意差はなかった。多層包帯法を23時間行う治療は強力な治療であり,SLDの上乗せ効果はなかったものと考えられる。 以上より,上肢リンパ浮腫に対する治療として,MLDとSLDの単独の効果はいまだ不明であると推察される。圧迫療法を含む標準療法におけるMLDの上乗せ効果は意見が分かれるところであるが,圧迫は長時間行うものであり,MLDは集中治療以外では連日施行することは不可能なので,その効果を比較すること自体難しい。 結論として,MLDは患者の意向に一致し,効果が期待される場合に行うこととし,その実施の可否は主治医の判断に委ねられる。SLD単独の施行は,その効果について,さらに報告数が少ないため勧められない。2) 下肢について Szubaらは,四肢リンパ浮腫に対し,MLDと弾性包帯による圧迫療法を施行する前向き試験を行った11)。治療は,四肢リンパ浮腫患者79人に対してMLDを30〜60分間行い,治療3日目からSLDを開始した。MLD後は弾性包帯による圧迫を行った。結果として,浮腫の減少率は上肢は38±56%,下肢は41±27%であった。 また,Liaoらは,四肢リンパ浮腫に対しMLDと多層包帯法を施行する治療について前向き試験を行った12)。四肢リンパ浮腫患者30人に対して治療を行い,治療前後で有意な改善を認めた。これらの報告のように,MLDと圧迫療法による治療の効果を示す報告は多くあるが,下肢のリンパ浮腫に対するMLDの単独効果に関する論文はない。 下肢リンパ浮腫に対するMLDの治療効果を評価するには十分な情報がないが,上肢リンパ浮腫に関する論文も考慮すると,患者の意向を十分に検討し,かつ効果がはっきりと評価される場合に限り,行うことが推奨されると考える。SLD単独の施行は報告例も少なく勧められない。検索式・参考にした二次資料 文献の検索は,下記1)2)の手順で行った。

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