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推 奨背景・目的 過去には,運動(エクササイズ)は血流増加により体液貯留を助長すると考えられ,リンパ浮腫発症の危険因子として運動を積極的に推奨しないといった指導が一般的であった歴史もある。ただ,いまだに術後は患肢で重いものをもたず酷使しないようにといった指導がなされている場合もあり,リスクとベネフィットについてエビデンスに基づいた提案を行うことは大変重要であると考えられる。近年,適切な指導を行ったうえでの運動では,有害事象の発生はなく,逆にリンパ浮腫発症リスクの低減につながったとされるデータが蓄積されている。乳癌術後の上肢リンパ浮腫について検討した報告に比べ,下肢リンパ浮腫について検討している報告は少ない。下肢については圧迫療法と運動療法を組み合わせたものがほとんどであり,運動療法単独を検証したものは非常に少ない。解 説 リンパ浮腫の発症リスクのある患者に対し,運動の予防的効果を検証した研究の報告は,質,量ともに増加している。 Hayesらは,癌治療関連リンパ浮腫の発症リスクが高い患者および発症者に対して,運動による予防効果および治療効果を検証することを目的として定量的システマティックレビューを行った1)。未発症者に対する予防効果(12論文111症例),発症者に対する治療効果(36論文149症例)を抽出し,メタアナリシスを行った。治療効果については,運動後24時間以内に評価した急性期の研究と,4週から1年後で評価した一定の介入後の研究に分けて評価した。未発症者に対する予防効果について(9割は乳癌の報告),運動群ではrelative risk(RR)は0.9で,リンパ節郭清を5個以上行った場合に限るとRRは0.49であった。発症者に対する治療効果では,運動後24時間以内の評価はすべて乳癌患者であったが,リンパ浮腫の変化は認めなかった。また,症状についても同様であった。1年後の評価ではリンパ浮腫の変化は認めなかったが,疼痛,倦怠感,上肢機能,四肢筋力,QOLで有意に改善が認められた。 一方,癌種や治療様式ごとに適した運動プログラムについて,運動のfrequency,intensity,time and type (FITT)にも焦点を当てて,より有効な運動プログラムの確立を54 Ⅱ.疫学・予防乳癌関連上肢リンパ浮腫の発症リスクのある患者に対して,運動(エクササイズ)はリンパ浮腫発症予防の一環として推奨される。婦人科癌関連下肢リンパ浮腫における発症予防のための運動は,圧迫の併用という条件付きで行うことを考慮してもよ  上肢:グレードB 下肢:グレードC1い。 CQ 9続発性リンパ浮腫の発症リスクのある患者に対して,運動(エクササイズ)はリンパ浮腫発症予防の一環として勧められるか?

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