CQ 24:切除不能大腸癌に対する後方治療は推奨されるか?フッ化ピリミジン,oxaliplatin,irinotecan,血管新生阻害薬,抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)に不応または不耐(投与不適を含む)となった場合,後方治療を行うことを推奨する。① FTD/TPI+BEV療法(推奨度1・エビデンスレベルA,合意率:96%)② Regorafenib療法(推奨度2・エビデンスレベルA,合意率:74%)③ FTD/TPI療法(推奨度2・エデビデンスレベルA,合意率:87%) 切除不能大腸癌では,フッ化ピリミジン,oxaliplatin,irinotecan,血管新生阻害薬,抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)に不応または不耐(投与不適を含む)となった際の後方治療として,regorafenib療法(REG)およびtrifluridine(FTD)/tipiracil塩酸塩(TPI)単独療法(TAS‒102,以下FTD/TPI)の有用性が,日本人患者も含まれたプラセボ対照国際共同第Ⅲ相試験CORRECT試験1,2)およびRECOURSE試験3)により,検証されている(COR-RECT試験:全生存期間中央値6.4 vs. 5.0カ月,ハザード比0.77,95%信頼区間0.64‒0.94,p=0.0052;RECOURSE試験:全生存期間中央値7.1カ月 vs. 5.3カ月,ハザード比0.68,95%信頼区間0.58‒0.81,p<0.001)。また,FTD/TPIとBEVの併用療法は,本邦で実施された第Ⅰ/Ⅱ相試験にて良好な有効性が示唆され4‒6),その後,欧州を中心に三次治療例を対象に実施されたFTD/TPI療法との第Ⅲ相試験SUNLIGHT試験では,主要評価項目である全生存期間の有意な延長が示された(中央値10.8カ月 vs. 7.5カ月,ハザード比0.61,95%信頼区間0.49‒0.77,p<0.001)7)。 有害事象として,REGでは手足皮膚反応,疲労,下痢,高血圧等の非血液毒性が,FTD/TPIでは白血球・好中球数減少などの血液毒性の頻度が高く,有害事象のプロファイルが異なる。また,FTD/TPIにBEVを併用することで好中球数・血小板数減少といった血液毒性や悪心,疲労,口内炎,高血圧等の非血液毒性の頻度が増加することが報告されている。以上より,REGおよびFTD/TPI,FTD/TPI+BEVはいずれも生存期間の延長が確認されており,副作用に留意が必要であるが,推奨される治療である。 いずれの治療を先行するかについては,REGとFTD/TPIまたはFTD/TPI+BEVを直接比較したランダム化比較試験はないが,大腸癌研究会が行ったREGとFTD/TPIの後方視的研究における650名の傾向スコア解析8)では,生存期間のハザード比は0.96(95%信頼区間0.78‒1.18,p=0.69)であり,両薬剤の有効性は同程度と考えられる。したがって,FTD/TPIに対して生存期間延長効果を示したFTD/TPI+BEVが後方治療の第一選択肢と考えるが,BEVの併用が困難な患者にはREG,FTD/TPI単独療法のいずれかをリスクとベネフィットを考慮したうえで選択することが望ましい。なお,PS 2以上の患者に対してはREGおよびFTD/TPI,FTD/TPI+BEVのいずれも有効性・安全性は確立されておらず,治療適応外とし対症療法を選択するのが望ましい。また,安全性を高めるため,REGについては,160 mg/日の標準用量で治療を開始せず,80 mgあるいは120 mgから開始し副作用が軽度であれば増量していくストラテジーが試みられており,有効性を損なわずに安全に投与できる可能性が示唆されている9,10)。128 Clinical Questions
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