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1  内視鏡切除の目的には診断と治療の両面がある。本法は切除生検(excisional biopsy)であり,切除標本の組織学的検索によって治療の根治性と外科的追加腸切除の必要性を判定する。(CQ 1)注1 ポリペクトミー 病巣茎部にスネアをかけて高周波電流によって焼灼切除する方法。主として隆起型病変に用いられる。最近,高周波電流を使用しないコールドポリペクトミーという手技が主に1 cm未満の腫瘍に適用されるようになったが,本手技は,深部断端が十分確保されないため癌は適応にならない。したがって術前の拡大観察による質的診断(腺腫,SSLと癌の鑑別)が重要である。注2 EMR 粘膜下層に生理食塩水などを局注して病巣を挙上させ,ポリペクトミーの手技により焼灼切除する方法。スネア法1),吸引キャップ法(EMRC)2)などがある。主として表面型腫瘍や大きな無茎性病変に用いられる。 局注の代わりに浸水下(生食)で浮力を利用する方法がunderwater EMR(UEMR)4)である。注3 ESD 病変周囲,粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム溶液などを局注して病巣を挙上させ,専用のナイフで病変周辺の切開,粘膜下層の剝離を進め腫瘍を一括切除する手技である3)。主として,EMRで一括切除できない大きな腫瘍,特に早期癌が適応である。注4 precutting EMR ESD用ナイフあるいはスネア先端を用いて病変周囲切開後,粘膜下層の剝離を全く行わ注5 hybrid ESD ESD専用ナイフあるいはスネア先端を用いて病変周囲切開後,粘膜下層の剝離操作を行い,2  cT1高度浸潤癌の診断指標として,「緊満感,びらん,潰瘍,ヒダ集中,変形・硬化像」などの内視鏡所見,X線造影検査,色素内視鏡観察,NBI/BLIなどの画像強調観察7),拡大内視鏡観察,超音波内視鏡検査所見などを参考にする8‒12)。3  内視鏡切除後の治療方針の決定に際しては,切除標本の緻密な組織学的検索が4  切除断端および最深部の癌浸潤状況を正確に診断するには,一括切除が必須で コメントずにスネアリングを施行する手技6)。最終的にスネアリングを施行する手技6)。1.Stage 0~Stage Ⅲ大腸癌の治療方針 13必須である。そのため,下記の点に留意する。  ・ ポリペクトミー標本では切除断端に墨汁などによるマーキングを施し,切除断端を含む最大割面を観察する。  ・ EMR標本やESD標本では切除標本を伸展固定し,粘膜筋板と垂直な割面を作製する。  ・ 治療内容(切除法,併用療法の有無,一括切除か分割切除か,その選択理由など)と切除標本の肉眼所見を記載することが望ましい。ある。  ・ スネアポリペクトミーやEMRで無理なく一括切除できる限界は20 mmである3)。  ・ 大腸のESDは,2012年4月に「早期悪性腫瘍」に対して保険適用が認可された「大きさにかかわらず一括切除が可能な内視鏡切除手技」であるが,技術的難易度が高く偶発症(穿孔)の危険性が高いので,施行術者の技量を考慮して施行する。径20~50 mmまでの病変が保険適用になっていたが,2018年4月の改訂で腫瘍径の上限が撤廃され,最大径20 mm以上の早期大腸癌および20 mm以下でも線維化を伴う早期大腸癌が適応となった。  ・ 吸引キャップ法(EMRC)は,結腸病変に用いると穿孔の危険性が高いとする報告がある。

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