CQ 2:早期大腸癌の内視鏡切除後にサーベイランスは推奨されるか?① 内視鏡切除の結果が一括切除かつ断端陰性の場合には異時性大腸腫瘍の検索を目的として1年後の内視鏡検査によるサーベイランスを行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルB,合意率:96%)② 内視鏡切除の結果が分割切除,水平断端陽性の場合には局所再発のリスクが上昇するために,6カ月前後での内視鏡検査によるサーベイランスを行うことを強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルB,合意率:100%)③ pT1癌で追加腸切除を行わなかった場合には,リンパ節転移や遠隔転移による再発の検索を目的として,内視鏡検査に加えてCT検査などの画像診断や腫瘍マーカーなどを用いたサーベイランスを行うことを強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルB,合意率:100%) 早期大腸癌を内視鏡切除した後の異時性大腸腫瘍発生を評価した報告はほとんどなく,多くの報告はhigh grade dysplasia(HGD)(本邦のpTis癌に相当)を含むadvanced neoplasia(AN)の切除後の検討である。初回検査でHGDを有する場合の経過観察中の異時性ANの発生リスク比は大腸腫瘍がなかった群の6.9倍であり,10 mm以上の腺腫,絨毛腺腫と同等である1)。サーベイランスの是非については,米国のNational polyp studyの長期コホート研究の結果から,HGDを含む大腸腫瘍に対する内視鏡切除後にサーベイランス検査が定期的に実施されれば,15.8年の経過観察において大腸癌死亡率が53%抑制されると報告された2)。一方,AN切除後,サーベイランスを行わない場合,サーベイランス群と比較し,異時性大腸癌のリスクが4.26倍に増加するという報告がある3)。以上より早期大腸癌の内視鏡切除後のサーベイランスは必須と考えられる。米国および欧州のガイドラインではHGD切除後の推奨サーベイランス間隔は3年と設定されている4,5)。ポーランドのNational screening programを基にした研究から,HGDおよび20 mm以上の腫瘍の内視鏡切除後の大腸癌罹患および死亡のリスクがそれ以外のANの2倍以上となることが報告された6)。また,本邦で実施された大腸ESD症例を対象とした長期コホート研究(CREATE‒J)の結果より,20 mm以上(約50%がpTisまたはpT1癌)の1437症例の長期経過観察中(観察期間中央値46.0カ月)に15例(1.0%)の異時性大腸浸潤癌が発生した。異時癌発見までの期間の中央値は26.8カ月であり,ESD後2回目のサーベイランスで発見された症例が多く,15例中13例が外科的治療を実施されていた7)。以上より,3年後では頻度は低いが異時性大腸癌が発見された場合には,内視鏡切除が困難な進行度である可能性が高いために,初回に早期大腸癌の内視鏡切除を行った後のサーベイランス間隔は1年が妥当である。2020年に発刊された本邦の「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」においてもpTisまたはpT1症例の内視鏡サーベイランスは1年後が推奨されている8,9)。 早期大腸癌の内視鏡切除の結果が分割切除または水平断端陽性であった場合には,内視鏡切除の方法に関わらず局所再発のリスクが上昇する。特に分割切除後の局所再発は9.1~27.5%で2年以内に発生することが多い10‒14)。分割切除後の最適なサーベイランス期間を検証する目的に,本邦および台湾で多施設無作為化比較試験が実施された。その結果,3カ月CQ 2 73
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