2024年(令和6年)11月 第9版の序理事長 山 本 信 之前理事長 池 田 徳 彦委員長 渡 辺 俊 一前委員長 伊 達 洋 至特定非営利活動法人日本肺癌学会肺癌取扱い規約委員会 近年の肺癌治療,早期癌に対する低侵襲治療分子標的薬,免疫療法などの新規薬剤の開発,さらにこれらを駆使した周術期治療の進歩は目覚ましく,多くの肺癌患者を治癒できる時代となりました。正しい治療戦略を選択するうえでも,肺癌取扱い規約の改訂は必須であります。 肺癌診療レベルの向上によって治療適応や治療手段にも変化があり,精緻化した診療に対応するため,病期分類や病理,細胞診などの形態学,画像解析も見直す必要が出てまいりました。このたびUICC/AJCCによって肺癌の病期分類については第8版から第9版に改訂されることとなり,これを機に,日常診療に益するよう,肺癌取扱い規約第9版を発刊することとなりました。 第9版の主な変更点をまとめると以下のようになります。 第9版のTNM分類に関しては,第8版で大きく変更があったT分類については変更がなく,主な変更点は,N分類とM分類でした。N分類については,N2が,単一ステーションへの転移の場合にはN2a,複数ステーションへの転移の場合にはN2bに細分化されました。M分類については,M1cにおいて,胸腔外一臓器への多発転移の場合はM1c1に,胸腔外多臓器への多発転移の場合はM1c2に細分化されました。以上のTNM分類の変更に伴い,病期分類の変更がなされました。 病理診断の項目では,すでに2021年にWeb公開されている「新WHO分類に準拠した病理組織分類」を踏襲し,2021年に改訂されたWHO分類に沿った内容としたほか,縮小手術に対応した切り出しマニュアルの記載を追加しました。さらに,国際的な標準に準拠すべく「病理学的効果判定基準」を改訂しました。 細胞診の項目では,2022年に発刊されたWHO呼吸器細胞診報告様式に基づき,従来の肺癌細胞診判定区分を大幅に見直し,全面的な改訂を行いました。主たる改訂点は,判定区分を従来の3カテゴリーから5カテゴリー(不適正,陰性,異型,悪性疑い,悪性)に変更したことと,判定区分ごとに悪性の危険性 risk of malignancy(ROM)と推奨対処法について言及したことです。 画像診断分類においては,TNM分類の変更に対応した記載とし,画像所見実例を追加しました。 RECIST ガイドラインを用いた治療効果判定の手引きの項目では,“附.Modified RECIST criteria を用いた悪性胸膜中皮腫の治療効果判定の手引き”を中皮腫瘍取扱い規約に移管しました。 第9版の改訂にあたりましてご尽力いただきました各関係委員会の皆様に心より感謝申し上げるとともに,本冊子が日本の肺がん治療および研究のさらなる飛躍に貢献することを祈念しております。
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