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 胃癌治療ガイドラインはこれまで,わが国に蓄積された胃癌治療に関する膨大なデータの詳細な解析と,国内外から報告された新たなエビデンスに基づき,適切な治療法を提示してきた。臨床現場での使用を意識し,第5版より標準的な治療についての教科書形式の解説(「治療法」)と,臨床的に重要なクリニカルクエスチョン(CQ)に対する推奨文・解説の両方を記載し,本版でもこの構成を踏襲している。 今回の改訂では,初版の基本理念を維持しつつ,エビデンスに基づいた治療をさらに推し進めるために,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」を参考とした作成方法を採用した。すなわち,最新の知見も踏まえてCQを設定し,独立したシステマティックレビュー委員が文献を評価し,これに基づいてガイドライン作成委員が合議により推奨の強さを決定した。この結果,推奨される治療の根拠が明確に示されるとともに,確かな推奨治療を示すにはさらなる研究が必要な領域も明らかとなった。 本版の主な改訂点を以下に列挙する。1. 外科治療,内視鏡治療,化学療法,緩和的治療に関するCQを41項目に増した。2. 周術期化学療法について外科系および内科系委員合同でCQを作成し推奨を示した。3. 胃切除後長期障害への対応に関する3つのCQを作成し推奨を示した。4. 高齢者における外科治療,内視鏡治療,化学療法についてCQを作成し推奨を示した。5. 切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法のレジメンは,「推奨されるレジメン」,「条件付きで推奨されるレジメン」として,「治療法」の章のアルゴリズムに列記した。シスプラチン併用レジメンに対し,オキサリプラチン併用レジメンがより好ましいことをアルゴリズムへ記載した。6. バイオマーカー(HER2, CLDN18, PD‒L1, MSI/MMR)に基づく治療選択について「治療法」で解説し,またCQでは最新の研究結果を踏まえた推奨を示した。これらの内容は日本胃癌学会にて策定した「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き」第1.1版に対応するものである。7. 緩和的治療におけるアナモレリンおよび出血性進行胃癌に対する緩和的放射線照射に関するCQを作成し推奨を示した。 わが国の胃癌診療において本ガイドラインの推奨治療がどのように行われているか,その実態を知るために,「Quality Indicatorによる胃がん医療の均てん化・実態に関する研究」が継続して行われている。2021年の院内がん登録とそのDPCデータの解析結果を巻末に収載した。2025年3月改訂にあたってiii

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