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域転移,麻痺や脳圧亢進などの症状を伴う脳転移,著しい疼痛・骨折や脊髄神経障害を伴う骨転移などに対しては,手術や放射線治療などの局所治療も侵襲のバランスに応じて検討される。 転移や再発乳癌は治癒が困難であり,その診断は患者にとって非常に「Bad news/悪い知らせ」となる。そのなかで患者が人生で大切にしていること,どのように生きていきたいかなど患者の価値観を知ることは重要であり,医療者にはそれらを尊重し,サポートする姿勢が求められる。また,な身体的症状を生じることもあるため,心理状態の評価と必要に応じ,カウンセリングや精神科と連携し心理的支援を行う。さらに,患者のセルフケア能力を高めるような支援のための多職種アプローチも有用である。 患者ごとに期待できる人的・社会的支援は異なる。個々の生活環境,活動度,経済的状況,ライフスタイルや就労,家事,育児,介護など社会的役割等の理解に努める。さらに,社会資源,経済的支援の可能性,家族の社会環境,キーパーソンの身体精神的状況などに配慮することも重要となる。 治療方針の選択,今後のケアの方針の相談などの場において,前述の① 身体的因子,② 腫瘍側因子,および③ 患者の意向や社会的背景を考慮しつつ,医療者は患者およびケアギバーとともに今後の医療やケアの目的・ゴールの設定をその都度行う。適応となる医療やケアが複数ある場合,あるいは臨床試験・治験等が選択肢となることもあるため,多職種が連携しつつ方針を模索することが有用となる。医療者と患者は,それまでの経過や治療に関する情報を共有し,患者およびケアギバーの意向や価値観を尊重し,今後の方針につい肢,具体的な治療内容,コスト,通院スケジュール,有害事象の対処法,緩和医療など話し合う内容は多岐にわたる。わかりやすい言葉を用い,理解度に配慮しつつ丁寧に説明し,患者の意思決定支援を行う。 医療・ケアを選択し開始した後は,その経過を評価する。薬物療法や放射線治療では Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)に基づいて抗腫瘍効果の評価を試みるが,実地臨床においてはその適用が困難なこともある。また,がん薬物療法の有害反応はときに重篤であり,特に進行症例では注意を要する。有害事象の評価方法として有害事象共通用語規準(Common Terminol-ogy Criteria for Adverse Events;CTCAE)があるが,悪心や倦怠感のような主観的有害事象は医療者が過小評価する傾向があると報告されている。治療を継続しても利益が得られない,もしくは許容できない有害事象が認められた場合にはその治療を中止する。日常診療では治療中止基準は必ずしも明確ではなく,画像評価,血液データ,臨床症状,臓器障害,PS 低下,そして患者の意向などを総合的に評価し判断する。方針・ケアの変更を要する場合に SDM は繰り返され,そうした過程で医療者と患者・ケアギバーの信頼関係が深まり,以降の医療やアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)が円滑となり得る。 緩和ケア・医療の導入は終末期にのみ開始されるものではなく,その早期導入は転移性腫瘍において年齢や状態を問わず,QOL の維持や生存期間の延長などの効果が期待されている。腫瘍治療チーム,心理支援チーム,緩和医療チーム,かかりつけ医やソーシャルワーカーなど社会支援環境との適切な連携が求められる。また,終末期に至る前から,終末期を想定して介護保険制度,在宅医療や療養型施設の活用,緩和ケア病棟の希望確認など,患者およびケアギバーの意向を継続的に確認しつつ,その後の生活のあり方について患者・ケアギバー・医療者で協同してアドバンス・「悪い知らせ」により不安・抑うつ症状やさまざまて SDM を行う。推奨され得る治療やケアの選択222 第 3 章 治 療c.患者の価値観・希望や社会的背景を把握するd.治 療 の 選 択 と Shared DecisionMaking(SDM)e.医療・ケア選択後の経過f.ア ド バ ン ス・ ケ ア・ プ ラ ン ニ ン グ(ACP)と緩和ケア・医療

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