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 医療分野での AI(人工知能)開発が急速に進んでおり,特にディープラーニング(deep learning:深層学習)の手法を用いることで画像診断においても高い精度での診断支援ができるようになってきた1)。乳腺診療を中心とした画像診断における AI 利用の現状と今後について検討する。1) 現在の AI 技術の中心となるディープラーニングとは 機械学習のなかで,教師あり学習と呼ばれる手法では,多数の画像とその答え(例:良悪性)を教師データとして用意すると,コンピュータが勝手に学習して特徴量を見つけ,新たな画像を入力すればその答えを示すようになる。ディープラーニングは機械学習の一つで,多層化させたニューラルネットワーク(人間の脳神経の構造を模倣した作り)を用いたものであり,画像認識においては CNN(convo-lutional neural network)という手法が多く用いられる(図 1)。高画質の画像を教師画像とすることにより,低線量や低解像度の画像の改善を行うことも可能であり,既に CT や MRI では実用化が進んでいる。 ディープラーニングでは学習データの量や質によって精度が変化する。また,過学習によって別のデータに対しては低性能になるというような問題もある。AI は診断根拠がわからないブラックボックスとも考えられるが,判定の根拠を示す AI も登場してきている。現時点の AI 製品は,市販後学習は行わないため,独自に成長することはない。2) 病変検出を行う CADe と診断を行う CADx マンモグラフィにおいては,アルゴリズムベースで病変検出を補助する CADe(computer aided detec-tion)製品が従来から存在する。腫瘤や石灰化を検出してくれることで見逃しを防ぐ効果は期待できるものの,偽陽性が多いことが知られ,普及が進まない理由の一つと思われる。 近年はディープラーニングを用いたマンモグラフィの AI 開発が大規模に行われ,海外では良悪性判別など病変の質的評価も行う CADx (computer aided diagnosis)製品が登場し,読影医師と同等程度の診断能も報告されている2)(表 1)。また,乳房構成の判定にも AI を用いたものがあり,評価者間不一致のある人間よりも客観性が高いと考えられる。日本にもそろそろ導入が進むことと思われる。 乳房超音波においても AI の研究が進み3)4),病変検出を行う CADe や質的診断を行う CADx が国内外で概に製品化されている。3) これからの AI の課題 現時点では診断の責任は医師にあり,AI は病変の検出の補助や診断の補助といった位置付けである。AIを導入することで時間の節約,読影者の疲労軽減,経験やスキルの不足を補うことができると考えられるが,AI の診断能を製品ごとに十分に理解して用いる必要があり,病院ごとの管理体制も必要となる。また,AI を使って診断を受ける受診者の意向も重要である5)。これからは AI を使うかどうかでなく,どのように AI を実装していくかが課題となる。COLUMN 画像診断における AI の利用AI(人工知能)機械学習ニューラルネットワークディープラーニングCNN(久保田一徳)3.画像診断/COLUMN 151CADe(computer aided detection):病変(異常)を検出するものCADx(computer aided diagnosis):病変(異常)の質的な評価(良悪性など)を行うものNon―CADe:臓器の判別など,病変検出を行わないもの表 1.CAD の種類参考文献 1) 藤田広志.乳癌の臨.2021; 36(1): 7‒17. 2) McKinney SM, et al. Nature. 2020; 577(7788): 89‒94. 3) Fujioka T, et al. Diagnostics (Basel). 2020; 10(12): 1055.図 1.AI の分類 4) 椎名毅ほか.乳癌の臨.2021; 36(1): 39‒46. 5) Ongena YP, et al. J Am Coll Radiol. 2021; 18(1 Pt A): 79‒86.

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